◆どん底から救ったセクシー系VTuber配信
――社会復帰できる状態で退院したんですか?東:いえ。社会復帰できる状態ではなかったですね。結婚を前提に同棲を始めて、彼に「仕事を辞めて家に入ってほしい」と言われて退職していたこともあって、これからどうやって生きていこうという悩みもありました。
――退院後はどうしたんですか?
東:実家に戻ったんですけど、定時で働く仕事はもちろんできなかったんです。入院中に泣きながらネット配信を見ていたんです。それを見ていたら「私も好きなことをしよう。なんかアホらしいな」って思ったんですよ。だって、彼に自分の女性性を否定されて、尊厳みたいなものを否定されて……。なので、思い出すとちょっと……(涙)。
――でも今こうやって生活してるので、いいじゃないですか。
東:そうですね。
――そして、今ではセクシー女優として大活躍しているんですが、そこに至った経緯は何ですか?
東:学生時代に少しだけライブチャットをしていたんです。それを思い出して、退院後、バーチャルのライブチャット、いわゆるVTuberのライブチャットをしたんですよ。それを足がかりにセクシー系VTuber事務所に応募したんです。そうしたら採用されライブチャットで貯めたお金で、5万円くらいのオンボロアパートを借り、そこにベッドと机だけ置いて配信をする生活を始めたんですよ。それが退院して3か月後くらいの話でしたね。
――東さんはネットとの相性がすごくよかったんですか? 逆にネットで傷つく人もいるじゃないですか。今だと、ちょっとしたことで炎上しますので。
東:もちろん、治りきっていない状態でセクシー系VTuberを始めちゃったものですから、最終的にちょっと病んだりはしたんですけど、ファンの方と配信を通して接することが楽しかったんです。私は配信者で供給する側なんですけど、逆にファンの方に癒やされていた部分が大きかったです。チャンネル登録者数が5万人、10万人と増えていったらいいなという目標も掲げつつ、それに対してちゃんと動ける自分になっていたことが、私の中で活力を確認する手段だったんです。
――決まった時間にやらなくてもいいし、スマホやパソコンさえあればどこでもできるので、配信は社会復帰のリハビリによかったんですね。
東:ネット配信は治療法として確立するには、もちろん危ない面もありますけど、画面越しとはいえ、社会との接点ができたので、うつ復帰後の落ち込みが減って前向きになれたんです。
――攻撃してくる人もいるけど、現代的な社会復帰の手段ですよね。
東:私は事務所とちょっと衝突するようなところがあって、最終的に辞めたんです。辞めたあとはまた落ち込んじゃって、波が多い人生だなっていうのはすごく感じてるところです。でも配信は楽しいし、それが仕事にできる状態があったので、そのときは安定していました。
――VTuberは20年前だったらなかった仕事だし、外に行かなくても社会と接点を持てるから、いいこともありますね。
東:VTuberだと、化粧もしないでキャラクターで出られるので、それは楽でしたね。私自身、そんなにおしゃれに敏感じゃないタイプなので、そういう面もすごい相性がよかったです。
――そういう意味ではネットに救われましたか?
東:救われました。実は今でも、その頃のファンの方がイベントに来てくれるんですよ。
◆性に翻弄された私がセクシー女優になった理由
――セクシー系VTuberを経て、セクシー女優にはどうしてなったんですか?東:性に悩んだ生活を送り、翻弄され、精神を病んだ人間として、性に対する命題があるんです。「性を大事にしないと、そもそも人間として成り立たないぞ」っていうことを強く言いたいんです。性交渉自体もそうですけど、性に対するお互いの価値観は生まれや育ちで、それぞれ違うじゃないですか。そういう性の価値観の違いをないがしろにしてはいけないということを体を張って伝えることが目的としてあるんです。
――それがセクシー女優だったんですか?
東:自分で体を張ってセクシーな作品に出演することで、性に対する価値観をないがしろにしてはいけないと、伝えていける人になりたいのが、セクシー女優になった理由の一つとしてあるんです。元々は平凡な派遣社員だったんですけど、曲がりなりにもここまで来たんです。結婚を約束していた彼にも、今の私の職業を知ってほしくて顔出しでやっていますし、様々な経験を経た結果として、私はこの世界にいるぞっていうことを伝えたい気持ちがあるんです。
――「当時落ち込んでた私は、今輝いてるぞ」っていうのを見せたいんですか?
東:もちろんそれも理由の一つとしてありますし、いわゆるセクシーなことをタブー視して、不浄なものとして隠そうとする価値観を揺さぶりたい目的もあるんです。
――なるほど。価値観を変えたいんですか?
東:もう彼とは世界が違うので、価値観は変えなくていいんです。でも人間って、体あっての生き物なんです。性は生きて命を繋ぐことそのものに直結しているんです。なのに社会は、それを当たり前に消費する一方で、正面から語ることや、それを担う人間を「タブー」として遠ざけてきました。この矛盾を、医者とは社会的に真逆の、セクシー女優という立場から壊していきたいんです。
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結婚を目前に人生が一変し、心身の不調や別れ、住む場所まで失うという苦しい経験を乗り越えた東実果さん。そのすべてを包み隠さず語った言葉には、実際に経験した人だからこその重みがある。恋愛や結婚、そして性との向き合い方に正解はない。
そして、お互いの価値観を尊重し、真剣に向き合うことの大切さは、このインタビューを通して確かに伝わってきた。

X:@Azuma_Mika_
<取材・文・撮影/神楽坂文人(X:@kagurazakabunji)>
【神楽坂文人】
世界一セクシー女優を取材しているカメラマン、ライター、インタビュアー。元成人誌編集者のため、最後の砦として活躍中。年間イベント取材数300本超え! 年間インタビュー数200本超え! バイクで都内を駆け巡り1日で複数の仕事を受けている。X(旧Twitter):@kagurazakabunji

