戦場は最高級品ではなく、中価格帯へ
世界的にワインの消費量そのものは減少傾向にある。ただ報告書は、これを単純な撤退ではなく行動変容として読む。飲む頻度は減っても、一杯あたりに向ける注意は増している、という見方だ。だとすれば競争の焦点は、最高級品ではなく中価格帯に移ることになる。8ユーロと12ユーロのワインが並ぶ棚で、価格と品質イメージと体験の帳尻が問われる場面である。
この文脈では、栓の種類も無視できない差になりうる。8ユーロのワインにあえてコルクを選ぶことは、生産者側の意図表明として機能する、というのが報告書の主張だ。もっともコルクの単価は合成栓より高く、回転の速いカテゴリーでは合理性を欠く場面もある。業界自身、早飲みワインには圧搾コルクやマイクロ凝集コルクを推奨しており、天然一体型コルクの出番を熟成型のワインに限定しているあたりは、案外冷静な棲み分けと言えるだろう。
栓にも「格」がある——ワインのタイプで変わるコルクの種類
一口に「コルク栓」といっても、報告書によれば中身は細分化されている。長期熟成向けの高級キュヴェには気孔を残した天然一体型コルクが使われ、微小な酸素交換でワインを育てる。中期熟成向けには気孔を埋めた「コルマテ」タイプ、早飲みワインやエントリー価格帯には凝集コルクが使われ、後者は品質の安定性からプレミアム帯でも広く使われているそうだ。スパークリングワインには凝集コルクに天然コルクの薄い円盤を貼った「A2R」「A3R」タイプがあり、触れる面だけ天然素材にして圧力耐性と相性を両立させる。ポルトやシェリー、コニャックの世界でも、天然やコルマテ・凝集素材に木や金属の「頭部」を組み合わせた栓が伝統的に使われ、再栓のしやすさとデザイン性を兼ねているという。栓一つにも、ワインの個性に合わせた設計思想があるようだ。

