◆機体の壊れ方で明暗が分かれた
――機体はどのように壊れ、なぜ後部座席の4人だけが助かったのでしょうか。橋本:飛行機が墜落時に2か所で折れて、3つに分かれたんです。そのうち、後部側は前後が反転し、後ろから山の斜面を滑るようにして沢まで下り、そこで停まった。だから、ここから見つかったご遺体にはほとんど火傷がなかった。身体も背もたれに支えられていたためシートベルトによる切断は無いけれど、圧死や内臓破裂で亡くなった方が多かった。
機体中部にはエンジン部分があり、これが燃えてカランカランの白骨になっていた人もいました。一方、機体前方や2階部分に乗っていた人は、骨の損傷が極めてひどく、その形態をとどめていないものも多くありました。
生存者は後部座席にいた4人。いずれも女性で、たまたま座席の隙間に空間ができたところに収まったので助かったんだと思います。あの事故で「後部座席が安全だ」と言われましたが、そんなことはない、たまたま、この事故ではこういう壊れ方をしたから助かったということではないでしょうか。
◆遺体特定を支えた歯の情報
――身元確認において歯科所見が果たした役割を教えてください。518人という高い身元確認率に、法歯・法人類学の手法はどの程度貢献したとお考えですか。橋本:過去の大きな航空機事故は、ヨーロッパの報告でも遺体のおよそ4割が歯で身元確認されています。どの事故もほとんどそうなんです。日航123便も計算すると39.8%。ほぼ同じ数字でした。15歳以下の乗客については、歯や骨から性別や年齢、血液型がわかり、乗客名簿との照合で確認ができました。
歯の情報が得られないものについては、所持品、外見で見当をつけながら、最終的には指紋や足紋、血液型、本人固有の身体的な特徴などで確認していく。本来、所持品で「Aさんだ」と決めてはいけない。当時でも、確認は指紋か歯できちんとやる必要があったわけです。家族のなかには歯科医からもらったカルテの写しを握りしめて、遺体の間を歩き回っている方もいました。
この事故で、歯や骨が個人識別にいかに重要かが世の中に認識されました。そしてその後、全国47都道府県に警察歯科医制度ができ、現在に至っています。これは、この事故が残した大きなものだと思います。

