始まりは「公園をきれいにしたい」
変化のきっかけをつくったのが、「まちびらき隊」。先ほどクラピアを観察していた学生たちがメンバーだ。
まちびらき隊は、NPO法人「姿勢教育の孝心会」のもとで活動する子ども・学生主体のグループ。東田公園内には同法人が運営する「コミュニティーハウスさくら」があり、そこを拠点として、毎週日曜日の10時15分から定期活動を行っている。

活動が始まったのは2021年。「公園をきれいにしよう」。そんな純粋な思いから近隣の友だち同士が集まり、まず始めたのはゴミ拾いだった。代表は次の世代へと引き継がれながら活動が継続され、初期から現在まで参加を続けているメンバーもいる。
彼らは、ただ用意された活動に参加するのではない。自分たちで地域の問題を見つけ、「どうしたら変えられるか」を考え、実際の行動へとつなげていく。イベントを企画し、チラシをつくり、必要なら行政への申請書を用意する。商店街にプレゼンし、地域や企業にも協力を呼びかける。企画、チラシ制作、司会、写真・動画撮影、SNS発信など、活動を実現するための役割も細かく分担し、その一つひとつを子どもたち自身が担っている。
こうした活動のやり方は、上の世代から下の世代へと受け継がれてきた。大学生が高校生に、高校生がさらに年下の子どもたちに、遊びも交えながら活動の意義や方法を伝える。そうして少しずつ、「自分たちの街は、自分たちで変えられる」と考える仲間を増やしてきた。
「禁煙」か「分煙」か。東田公園が抱えていた課題
最初は、捨てられているゴミをくる日もくる日もひたすら拾った。活動日の日曜だけでなく、学校からの帰り道にも、クリスマスにも、お正月にも。それでも遊具のすぐ側や彼らが花を植えた花壇の中にも、酒瓶や空き缶、ペットボトルにたばこの吸い殻、傘、メガネ、服など、ありとあらゆるゴミが繰り返し捨てられた。

自分が植えた花の上が、そんな惨状になった時の気持ちを想像してみてほしい。どれほど悲しく、無力感にさいなまれるだろうか。しかし、彼らは諦めるでもなく、誰を責めるでもなく「なぜゴミは減らないのか」と考えた。例えば、たばこの吸い殻。メンバーである子どもたち自身は、もちろんたばこを吸わないが、彼らは吸う人の立場になって、捨てる場所がないことも吸い殻が散乱する一因なのではないかと考えた。

興味深いことに、東田公園では行政もまさに同じ課題に向き合っていた。川崎市は2024年3~4月、東田公園を含む市内6公園で禁煙の試行を実施し、利用者アンケートを行っている。東田公園では105人が回答。「公園での喫煙をどう思いますか」という問いに対し、「禁煙がいい」が45%、「分煙がいい」が42%だった。ほぼ真っ二つである。
市全体に寄せられた意見にも、「吸い殻のポイ捨てが怖い」「子どもへの副流煙が心配」という声がある一方、「灰皿があればそこで捨てる」「スモーキングエリアを設ければ、そこで吸ってほしいと言える」という分煙を求める声があった。 つまり、「吸う人を締め出すのか、何も規制しないのか」という二択ではなく、異なる立場の人が利用する公共空間で、どう折り合いをつけるかという課題が、現実に突きつけられていたのである。

東田公園で実験的に禁煙が導入された際、まちびらき隊は、活動を続けるなかで、むしろたばこの吸い殻のポイ捨てが増えたと感じたという。そこで市に対し、喫煙する人がルールを守って利用できる場所の設置を働きかけた。川崎市はその後、公園を原則禁煙としながら、常駐管理者のいる一部公園に「喫煙可能スペース」を設ける方針を決定。2025年7月1日から、東田公園にも設置された。
