45歳で夫が死亡。残された妻は「死亡一時金」と「寡婦年金」どちらを受け取るべき? 受給額を試算

夫婦のどちらかが亡くなると、遺された配偶者は、悲しみのなかでも生活を維持していかねばなりません。仮に夫が自営業など国民年金の第1号被保険者であった場合、国民年金の上乗せとして厚生年金に加入する会社員と異なり、万一の場合の公的年金による保障は少ないのが現状です。
 
年金を受け取ることなく亡くなった被保険者のうち、子のいない妻や遺族が受け取ることのできる公的給付は、死亡一時金と寡婦年金の2つがあります。
 
ただし、これらは同時に受け取れません。それぞれの内容を知ったうえで、どちらを選択すべきか検討しましょう。

死亡一時金と寡婦年金、それぞれの概要

日本国内に住む20歳から60歳までのすべての人は国民年金の加入者となり、受給要件を満たすと将来、老齢基礎年金を受け取れます。国民年金では加入者を、第1号被保険者(個人事業主などの自営業者)と第2号被保険者(会社員や公務員)、第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)の3種類に分けており、届出や保険料の支払方法がそれぞれ異なります。

 

将来の老齢年金だけでなく、病気やけがで傷害が残ったときの障害年金、万一の場合の遺族の生活に備えた遺族年金があります。ただし、遺族基礎年金は、受給対象者が「子のある配偶者」もしくは「子」に限られるため、子のない配偶者は給付の対象外です(子とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方をさします)。

 

自営業などの国民年金第1号被保険者が年金を受け取ることなく亡くなった場合、子のいない遺族が受け取ることのできる公的給付は、死亡一時金と寡婦年金の2つです。

 

死亡一時金とは

死亡一時金は、死亡日の前日において第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けないまま亡くなった場合、その方と生計を同じくしていた遺族に支給される一時金です。

 

遺族には順位があり、配偶者と子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順に、優先順位の高い方が受け取ります。図表1のとおり、死亡一時金の額は保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円です。

 

【図表1】

月数 金額
36月以上180月未満 120,000円
180月以上240月未満 145,000円
240月以上300月未満 170,000円
300月以上360月未満 220,000円
360月以上420月未満 270,000円
420月以上  320,000円

厚生労働省 (参考)死亡一時金の概要をもとに筆者が作成

 

例えば、20歳から45歳死亡時まで25年間(300月)第1号被保険者として保険料を納付した方が亡くなった場合には、22万円を一時金で受け取ります。ただし、支給されるのは一度限りという点に注意が必要です。

 

寡婦年金とは

寡婦年金は、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間(学生納付特例、納付猶予期間含む)が10年以上ある夫が亡くなったとき、その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでの間支給される年金です。

 

亡くなった夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けたことがあるときは支給されません。また、妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合も支給されません。年金額は、夫の第1号被保険者期間で計算された老齢基礎年金額の4分の3です。

 

例えば、20歳から45歳死亡時まで25年間(300月)第1号被保険者として保険料を納付した方の場合、

 

79万5000円(2023年度満額)×300/480 ×3/4 ≒ 37万2600円(年額)

 

20歳から60歳までの40年間(480月)保険料を納付した場合の老齢基礎年金満額(2023年度)をもとに300月納付した夫の老齢基礎年金額を計算し、さらに3/4に該当する金額を算出します。

 

死亡一時金と寡婦年金のそれぞれの概要を一覧にすると図表2のとおりです。

 

【図表2】

 

厚生労働省 (参考)死亡一時金の概要および日本年金機構 死亡一時金をもとに筆者が作成

 

受給額の総額で考えると「寡婦年金」の選択

死亡一時金と寡婦年金の受給要件ともに満たしているとき、両方受け取ることができないため、いずれかを選択する必要があります。

 

死亡一時金が一度限りの給付であるのに対し、寡婦年金は年金として支給されるので、受給額の総額で考えると「寡婦年金」が有利です。ただし、受け取れるのは60歳以降という点に留意してください。

 

また、死亡一時金は受給対象者が「配偶者」であり、妻を亡くした夫も要件を満たせば受け取れます。しかし、寡婦年金の場合、受給対象は夫を亡くした「妻」に限られる点にも注意しましょう。

 

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