【生命保険】告知義務違反により保険会社が契約を解除できない場合とは?

生命保険に加入する際には、保険契約者間の公平性の観点から、通常、既往症など健康状態の「告知」を行う必要があります。この告知内容に誤りがあった場合、保険会社は生命保険契約を解除できます。
 
一方、一定の場合には告知義務違反による解除を問えません。どのような場合に、保険会社が告知義務違反を根拠として、保険契約を解除できないのか解説します。

告知はなぜ必要?

生命保険は、多くの人が保険料を出しあい、相互保障をする制度です。つまり、加入当初から健康状態のよくない方や危険度の高い職業に従事されている方等が無条件に加入できるとすると、保険料負担の公平性を保つことができません。

 

正しく「告知」をすることは、保険制度において健全な運営や維持のために重要となります。そのため、一般的に、契約の際、健康状態やそのときの職業、既往歴等を告知することが義務づけられています。

 

なお、保険の種類等により告知事項は異なります。告知事項にない項目については、告知する必要がありません。

 

告知義務違反による解除の効果

告知義務者が、故意または重大な過失によって重要な事実について告知せず、または事実と違うことを告げていた場合には、告知義務違反となり、保険会社はその契約を解除できます(保険法55条1項・84条1項)。

 

解除の効果は、将来に向かってのみ効力を生じます(保険法59条1項)。したがって、支払済み保険料は返還されませんし、未払保険料があれば、支払う必要があります。また、解除の効果は将来に向かってのみ効力を生じますが、解除されるまでに発生した保険事故については保険金を受け取ることもできません(保険法59条2項1号)。

 

ただし、告知義務違反の事実と保険事故の発生との間に因果関係のないときは、保険金を受け取ることが可能です。例えば、糖尿病を告知せず、交通事故で死亡した場合などです。

 

解除した生命保険契約に解約返戻金がある場合、法律上、保険会社は解約返戻金を返還する必要はありません(保険法63条)が、実務上、保険会社は解約返戻金を返還しています。また、未経過保険料も返還しています。

 

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