奨学金の返還が難しくなったらどうすればいいの?

奨学金の返還が難しくなったらどうすればいいの?

 

独立行政法人日本学生支援機構による「令和2年学生生活調査」では、大学生(昼間部)の49.6%が奨学金を受給しています。

給付型以外の貸与型奨学金は卒業後に返還することになります。

ただし、失業や病気によって返済が難しい、もしくは返済できないといったケースに陥ることもあり得ます。

今回は、日本学生支援機構の貸与型奨学金について、返還ができなくなった際に必要な減額・猶予申請の概要や申請方法、注意点を解説します。

 

奨学金の返済を滞納するとどうなる?

 

奨学金の返済を滞納すると、以下のようなリスクがあります。

 

 ・電話や文書での督促

 ・延滞金の発生

 ・個人信用情報に傷がつく

 ・一括返還請求

 ・強制執行による給与・財産の差し押さえ

 

これらは延滞の期間により、以下のように順序立てて行われます。

 

■1ヶ月分を延滞した場合

本人や保証人に督促の電話や文書が届きます。ただし、延滞金の請求や個人信用情報機関への登録はありません。

翌月に2ヶ月分の金額がまとめて引き落とされます。

 

■2ヶ月分を延滞した場合

電話での督促に加えて延滞金が発生します。翌月に3ヶ月分の金額+延滞金が引き落とされる仕組みです。

延滞金は奨学金の種類(第一種、第二種など)や貸与されていた時期により異なりますが、年率1.5%〜10%です。

 

■3ヶ月以上延滞した場合

延滞金の発生に加え、個人信用情報機関に個人情報が登録されます。

クレジットカードの発行・利用停止や、自動車・住宅などのローン審査に影響が出てしまいます。

 

これ以降も返還に応じない場合は、期限が来ていない分も含めて奨学金全額を一括返還しなければなりません。

さらに督促を無視し続けると、最終的には強制執行により給与や財産が差し押さえられます。

 

このような事態に至る前に、返還が難しいと感じたら早めの対処が必要です。

 

返還が難しくなったら猶予・減額返還の申請を

 

日本学生支援機構では、返還が難しい方へ向けて以下3つの申請を受け付けています。

 

 ・減額返還制度

 ・返還期限猶予

 ・死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除

 

それぞれの概要を紹介しましょう。

 

■減額返還制度

怪我や病気、経済的な理由により返還が難しい場合、月々の返還額を2分の1もしくは3分の1にできます。

経済困難を理由として申請する場合は収入の基準があります。

 ・給与所得者:年間収入金額325万円以下

 ・給与所得以外の場合:年間所得金額225万円以下

 

減額返還の適用期間は1回の申請につき12ヶ月で、1年ごとに申請をすれば通算で15年間(180ヶ月)まで延長できます。

ただし、延滞していると減額返還制度は利用できません。

 

 

■返還期限猶予

怪我や病気、経済困難などで返還が難しい場合に奨学金の返還を猶予できます。

猶予についても、経済困難を理由に申請する場合は収入の基準があります。

 ・給与所得者:年間収入金額300万円以下

 ・給与所得以外の場合:年間所得金額200万円以下

 

返還猶予の適用期間は1回の申請につき12ヶ月です。1年ごとに申請すれば、通算10年(120ヶ月)まで延長できます。

病気や生活保護受給中など一部の事由では期限の制限なく、その状態が継続している限り期間を延長できます。

また、返還期限猶予は奨学金を延滞している方でも申請可能です。

現時点で延滞している方は早めに相談しましょう。

 

 

■死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除

本人が死亡した場合や精神もしくは身体の障害により労働能力を喪失、または高度の制限がある場合に返還を免除できる制度です。

 

減額返還・返還猶予の申請方法と注意点

 

ここでは、各種申請の方法と注意点を解説します。

 

■申請の方法

申請は郵送が基本ですが、一部の申請はWeb(スカラネットパーソナル)でも可能です。

 

【Webで申請できる事例】

 ・減額返還:申請事由が「新卒等」「経済困難」の場合

 ・返還猶予:申請事由が「新卒等」「経済困難」「生活保護受給中」の場合

   ※マイナンバーを機構に提出済み、現時点で延滞していないなどが条件

 

郵送の場合に必要な書類は以下のとおりです。

 ・奨学金減額返還願もしくは奨学金返還期限猶予願

 ・各種証明書類(申請事由により異なる)

 

願出用紙は日本学生支援機構のホームページよりダウンロードできます。

加えて各種証明書についても記載があるため確認しましょう。

減額返還制度の申請手続き

返還期限猶予の申請手続き

 

また、死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除は、申請の方法や書類が異なります。

詳細は日本学生支援機構のホームページを確認してください。

 

■申請時・利用時の注意点

申請は減額・猶予を適用したい期間の前々月末までにしなければなりません。

たとえば2024年の3月から減額返還したい場合、1月末までに機構へ到着するよう書類を送付します。

期間に余裕を持って送付しましょう。

また、減額適用期間中に2回連続で延滞すると、延滞発生時にさかのぼって減額が取り消されます。

通常の金額での返還に加えて延滞金も発生するため気をつけましょう。

 

まとめ

 

奨学金を延滞すると督促だけでなく延滞金の発生や個人信用情報機関への登録などのリスクがあります。

返還が難しい場合は無理せず減額制度や返還猶予を活用し、延滞することのないようにしましょう。

また、申請から適用までは2ヶ月から3ヶ月程度かかります。

不備があると審査が遅れる可能性もあるため、必要事項を確認しながら余裕を持って申請することが大切です。

 

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