物価が上がると「老後資金2000万円」では足りない? 昨年のように物価が年2%上がると必要額の2000万円がどのくらい膨らむ?

「老後2000万円問題」以降、2000万円が老後資金の目安といわれています。しかし、この「問題」は2019年ごろの話であり、昨年のように物価が上がると、2000万円では足りなくなる恐れがあります。
 
本記事では、仮に物価が毎年2%ずつ上がっていったとしたら、「老後資金2000万円」はどれくらい膨らむのかについて解説します。

老後資金は10年後に2割以上膨らむ

物価が2%上がるということは、簡単にいうと、昨年まで100円だった物が102円になるということです。言い換えれば、同じ物を買うためのお金が100円では足りなくなるということです。

 

これを老後資金2000万円に当てはめていうと、老後資金が2000万円では足りなくなるということになります。

 

毎年2%ずつ物価が上がると仮定すると、今2000万円の価値の物は1年後に2040万円、2年後に2080万8000円、3年後には2122万4160円となり、これに伴い必要資金も増えていきます。

 

継続的に物価が2%上がっていったとき、必要な老後資金2000万円がどれくらい膨らむのかは、いつ老後を迎えるかによっても異なります。この金額は、「終価係数」という係数を使って算出することができます。

 

物価が継続的に2%ずつ上がると仮定した場合の終価係数は、図表1のとおりです。

 

図表1

経過年数 10年 20年 30年
終価係数 1.2190 1.4859 1.8114

※筆者作成

 

例えば、物価が継続的に2%上昇すると仮定したときの、10年後の老後資金(現在価値2000万円)は、以下のように求められます。

 

2000万円 × 1.2190 = 2438万円

 

つまり、10年後に必要な老後資金は2438万円に膨らむという計算になります。同様にして、20年後に必要な老後資金は2971万8000円に、30年後に必要な老後資金は3622万8000円に膨らむということになります。

 

インフレ対策として物価連動国債などがある

物価が継続的に上がることを「インフレーション(インフレ)」といい、物価が継続的に下がることを「デフレーション(デフレ)」といいます。

 

「物価が上がる」とは「お金の価値に対して物の価値が上がる」ことを意味し、「物価が下がる」とは「お金の価値に対して物の価値が下がる」ことを意味します。つまり、インフレになるとお金の価値は(相対的に)下がり、デフレになるとお金の価値は(相対的に)上がります。

 

インフレのときとデフレのときでは、資産運用の方針が異なります。インフレのときは物の価値が上がっていくので、価値が下がる「お金」ではなく、価値が上がる「物」を保有しておくことが常とう手段とされます。

 

反対に、デフレのときはお金の価値が上がっていくので、価値が下がる「物」ではなく、価値が上がる「お金」を保有しておくことが常とう手段とされます。

 

先ほど、「物価が毎年2%上がると仮定した場合、必要な老後資金2000万円が10年後には2438万円になる」と述べましたが、これはあくまで「お金」としての価値です。「10年後に2438万円が必要となる」と考えると悲観的になるかもしれませんが、大切なのは対策を立てることです。

 

ポイントは、「価値を保存する」ということです。老後資金2000万円を「お金」で用意しようとしたとき、インフレリスクがあります。つまり、お金の価値が下がるというリスクです。このリスクは、「お金」を「物」に置き換えることで軽減できます。置き換える「物」として、物価連動国債、株式や不動産などが考えられます。

 

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