気配をすくって、絵にする。

この店を営むのは、オーナーのぎんさん。彫師でもある彼は全身にタトゥーをまとい、初めて会う人は思わず身構えてしまうかもしれない。
でも、口を開けばその印象は一変する。おだやかで、やさしくて、ときどき広島訛りがふっと混ざる話し方。言葉に込められた熱量は、静かに、でも確かに伝わってくる。

「日本人って、昔から“擬人化”のセンスがあると思うんです。文明が進んでも、目に見えないものに名前をつけて、かたちにして残そうとする。それが妖怪文化の根っこにある気がします」

たしかに、妖怪はただのキャラクターじゃない。
人のクセや記憶をまとった“誰か”のようで、ぎんさんの作品にも、そんな温度が静かに漂っている。
古い伝承に、いまの色を塗る——。そんな感覚が、この店のアートスタイルをかたちづくっている。目の覚めるようなビビッドカラーで描かれた妖怪たちは、一見ポップ。でもその奥では、静かに、そしてしぶとく、物語が息をしている。
かわいくて、ちょっとこわい。でも愛おしい。

壁いっぱいのマットたちは、とにかくにぎやか。でも、押しつけがましさがない。目が三つあったり、舌を出していたり。でもそれが、なんだか人間くさくて、親しみがわいてくる。
「妖怪って、怖い存在だったよな」——そんなイメージを、いつのまにかひっくり返してくれる。目が合った瞬間に、ふふっと笑ってしまう。ちょっとこわくて、なんか愛おしい。そんな感情のグラデーションが、この空間にはちゃんと息づいている。
