●企業でフキハラが起きたら、会社はどんな責任を負うのか
同じような「フキハラ」が民間企業で起きた場合、どうなるでしょうか。
まず、フキハラがパワハラと認定された場合には、パワハラをしていた者(多くの場合は上司でしょう)が不法行為に基づく損害賠償責任を負います。
次に、企業自身の責任も問われます。企業はパワハラ防止法(労働施策総合推進法30条の2)に基づき、パワハラを防止するために雇用管理上必要な措置を講じる義務を負っています。
仮にフキハラがパワハラと認定されれば、加害者本人が民法709条の不法行為責任を負うほか、会社も民法715条の使用者責任として損害賠償責任を負う可能性があります。
また、会社は労働契約法5条に基づく安全配慮義務を負っており、問題行為を把握しながら何ら対応しなければ、この義務に違反したとして、企業自身が709条に基づく損害賠償責任を負うこともありえます。
●「フキハラ」的な行為が違法と認定された裁判例
「フキハラ」的な行為が不法行為(違法)と認定された裁判例はいくつかあります。
東京地裁令和3年(2021年)7月1日の裁判例では、上司が部下に対し厳しい言葉で指導監督を行うようになったことについて、当初はやむを得ない面があったとしつつも、その程度が指導監督の範囲を逸脱して不当な精神的苦痛を与えたとして、不法行為の成立が認められ、慰謝料請求の一部が認容されました。
また、長崎地裁佐世保支部平成25年(2013年)12月9日の裁判例では、海上自衛隊の上司が部下に「できないんだったら、その仕事はやめろ」と怒鳴った行為について、それ以前の高圧的な指示や説明要求は正当な業務指導の範囲とされましたが、この発言については正当な指導の範囲を逸脱すると認定されました。
日常的なフキハラな態度はグレーゾーンにとどまっても、ある一言でラインを越えた例といえます。
一方で、パワハラとは認定されなかった裁判例もあります。大阪地裁平成30年(2018年)3月29日の裁判例では、月に1度の月例会議における上司の発言が「いささか厳しい内容のものが含まれていた」としても、不法行為を構成するまでは認められないと判断されています。
これらの裁判例が示すように、フキハラとパワハラの境界線は非常にあいまいです。言動の具体性・継続性・深刻さ・業務との関連性などによって個別に判断されます。
「不機嫌な態度が続く」という段階ではグレーゾーンにとどまりやすいですが、そこに具体的な発言・圧力が加わり、かつ継続・蓄積されると、パワハラ(不法行為)として認定されていく傾向があるといえるでしょう。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

