●職場のストレスに自傷行為
弁護側は情状として、被害者に対して損害賠償金400万円が支払われていることを主張した。また、被告人は現在、精神科に通院しており、医師からは「注意欠陥・多動性障害(ADHD)の疑いがある」と指摘され、心理的ケアを受けているという。
情状証人として出廷した母親によると、事件当時は別居しており、月に数回連絡を取る程度だった。被告人はもともと自分の気持ちを言葉にするのが苦手で、仕事の悩みを打ち明けることはほとんどなかったという。
ただ、その兆候とみられる出来事があった。被告人が自傷行為により救急搬送されたことがあったという。
その際、被告人は「職場のお局に偉そうに言われて、外に吐き出せないから自分で切って抑えている」と説明したと母親は証言した。
今後は家族で同居し、精神科通院に付き添うなどして再犯防止を見守っていくとした。
●「朝から泣きやがって」
被告人質問では、事件当時の心情も語られた。
利用者への介助がうまくいかず悩むことがあっても、「こういう職場なので、みんな同じだろう」と考え、同僚や上司へ相談することはなかったという。
被害者については、介助の際に手をつねられたり抵抗されたりすることがあり、「またやりやがって」と思うようになった。その感情は「怒り」だったと表現した。
しかし、その感情を周囲に相談することも、他の職員の対応方法を確認することもなかった。
事件当日、早朝のオムツ交換のために部屋に入ると、被害者は「イヤイヤ」と泣き出した。
それを見た被告人は「朝から泣きやがって」と怒りを爆発させ、オムツ交換を終えて床で仰向けになっていた被害者に対し、立った状態から膝を落とした。
被害者は大声で泣き出し、左目から出血していた。しかし被告人は事態を受け止められず、血を拭いただけで看護師に報告することもなくその場を離れた。
その後、施設管理者の聞き取りを拒否したり、否認を続け、逮捕されるまでの約3カ月間、施設で勤務を続けた。
被告人は「逮捕まで事態を受け止められなかった」と供述したが、その間どのような心境で働き続けていたのかは明らかにならなかった。
最後に、精神科への通院を続けることを誓い、被害者への謝罪の言葉を述べた。

