●裁判官を動かすのは“法の正義の感覚”
2025年4月に勝訴した「出自を知る権利」訴訟でも、事務所の先輩である海渡雄一弁護士とともに、子どもの権利条約や自由権規約への違反を主張。東京都には産みの親を調査する義務があるとする判断を引き出した。
「人権侵害の実態を理解してもらうため、欧州人権裁判所の事例を紹介しながら、『他国ではこうして救済している』と訴えました。判決文には、私自身も驚きました。おそらく裁判官にも、救済の必要性が伝わったのだと思います。
救済の道筋を示すうえで、法的な理論は不可欠です。ただ、よい判決を得た訴訟はいずれも論理に加え、裁判官に『この人を救済しないのは法の正義(リーガルマインド)に反する』と感じてもらえたからだと思っています」
●国際人権基準と国内実務のギャップを埋めたい
手間も時間もかかる国家賠償訴訟に関わるのは、事務所の方針でもある。
「東京共同は、いわば“駆け込み寺”なんです。『出自を知る権利』訴訟の原告も、何人もの弁護士に断られ、最後に私たちのところへ来たという経緯でした」
他では難しいと言われる案件を引き受けるのは、「これはおかしい」と感じる自身のリーガルマインドによるところが大きい。
「入管収容の恣意的拘禁や人質司法について、日本は国連から何度も勧告を受けていますが、状況はほとんど変わっていません。
無実を訴えるほど身体拘束が長引き、自白を強要される刑事司法は、“中世のようだ”と言われています。
国際人権基準と国内実務、判例のあいだには乖離があるので、そのギャップを埋めていきたいですね」
小川さんは、東京五輪汚職事件で逮捕・長期勾留された出版大手元会長、角川歴彦氏が提起した「人質司法は違憲だ」訴訟の弁護団メンバーでもある。
「この訴訟では、憲法と国際人権法を前面に出しています。入管収容と同じように、恣意的拘禁の違法性を指摘していますが、人質司法に真正面から国際人権法で挑む訴訟は、これまであまり例がなかったかもしれません」

