●髪がハサミに引っ張られる違和感がない
カット開始から30分ほど経った頃、受刑者の手が止まった。
手鏡を筆者に差し出しながら「今ざっと長さを切ったんですけど、後ろの感じとかどうですか?」と尋ねてくる。
前髪と後ろ髪をもっと短く切ってほしいと伝えると、「わかりました。では、全体的にもう少しスッキリさせる感じですね」と確認し、再びハサミを入れ始めた。

ここでふと気づいたことがある。
理容室や美容室でカットしてもらうとき、髪がハサミに引っかかって頭皮が引っ張られる、あの嫌な感覚を覚えることがある。
だが、今回はそれがまだ一度もない。
ハサミの切れ味がいいのか、それとも担当してくれた受刑者の腕なのかはわからない。ただ、心の中で「痛っ」と思う瞬間が一度もなかったことは驚きだった。

その間も、受刑者は目の前の筆者と鏡に映る姿とを交互に見ながら、黙々とハサミを動かしていく。

前髪を切る際は、人差し指と中指で髪を挟み、斜めにハサミを入れていく。

眉毛の長さも整え、最後はスキバサミで全体のボリュームを調整していく。

●切り直しを2度お願い
「いかがですか?」
50分ほどが経ち、再び仕上がりを確認する時間になった。
後頭部を確認しやすいように、折りたたみ式の鏡を頭の後ろに構えてくれる。
後ろ髪をもう少し切ってもらうか悩んでいると、「これ以上いくと刈り上げっぽくなってしまいます。今がギリギリかと。スッキリさせますか?」と助言してくれた。
その言葉に背中を押されて、さらにカットをお願いした。

数分後、「これでオッケーです」と伝えると、受刑者は床に落ちた髪を手際よく掃き集め、ゴミ箱へ入れた。


