●倒れた妻、追い詰められた夫婦
坂田さんが振り返る。
「最初に信金からお金を借りるとき、初めの担当者は親身にアドバイスをくれて、応援してくれたんです。人事異動で後継の担当者に変わると、ほとんど引き継がれていない様子でした」
支払いの相談をしたいからと、上司の支店長との面談を頼んだが、実現されなかったという。
「とにかく目の前の仕事を一所懸命して、お客さんに来てもらうしかありません」
夫婦にできることは限られていたが、すでに限界寸前だった。
「お客さんが来ないと食品ロスが出て赤字の要因にもなる。頑張っても心が空回りする。妻は自分の病気を抱えつつ家族の面倒をみて、僕以上に必死でやってくれていたのですが、ついには倒れてしまい2週間入院しました。やはり最大のストレスは信金からの取り立てでした」
●弁護士に債務整理を依頼
このままでは店を失うかもしれない──。限界を感じ坂田さんは、仕事の合間にインターネットで弁護士を探した。
店を手放さなくても済むように、自己破産ではなく任意整理を希望した。
「借金の債務整理には、借金を返す必要がなくなる自己破産や、減額などを求める任意整理があります。それぞれにメリットもデメリットもあります。でも、当時の私が求めていたのは、心を救ってほしいということでした。
藁にもすがる思いでしたが、メールや電話で問い合わせして面談し、最終的に説明に納得し、債務整理をお願いすることにしました。『もう信金と話さなくてもいいですよ』と声をかけてくれたときは、ホッとしたし、救われました」
弁護士に一任した後、信金の態度は大きく変わったという。
「どういうふうに決まったんですか」 「すみません、その話は保留にして、もう一回支店に来てください」 「支店長とお話しましょう」
●「お金を借りる側はすごい弱い立場」

「弁護士に債務整理の手数料を支払っても、お任せしたことで実際に精神的にすごく楽になりました。
後日、たまたま外で出くわした信金の担当者にあいさつしましたが、『ああ』というだけで足を止めることもなかった。
私たちが迷惑をかけたとはいえ、金の貸し借りの世界には人情がないのかなと思いました」
坂田さんは、この体験を通じて「お金を借りるというのは、すごい弱い立場」と感じている。
信金(300万円)と消費者金融(50万円)から借りたお金の任意整理を法律事務所に依頼。現在も弁護士の作った返済プログラムに沿って、無理のない計画で返済している。
●家族と常連客がいるから頑張れる

しっかりとした計画や十分な蓄えが必要で、事業を始めるにあたって、リスクの想定など自分たちに甘さがあったことは否めないと坂田さんは反省する。
しかし、お金のことばかり考えていた日々が苦しかったことは事実だ。
「あのままだったら、精神的におかしくなって最悪の展開になったんじゃないか、そんなことを夫婦でしみじみ話します。
すべては力不足の自分のせいだと思いますが、家族で手を取り合って頑張っていきます。子どもがいますし、踏ん張らなければならないですよね。
ほら、僕らには家族と同じくらい支えてくれる人がいる。『ここの唐揚げは日本一うまい』と褒めて通ってくれるお客さんたちです」
顔をほころばせた坂田さんの表情は穏やかだった。

