重症筋無力症の原因

重症筋無力症は、神経と筋肉のつなぎ目である神経筋接合部で、筋肉側(信号の受け手)に存在する分子に対して自己抗体が作られることで発症します。これらの自己抗体が受容体の働きを妨げることで、神経から筋肉への信号がうまく伝わらなくなり、筋力低下が生じます。
自己抗体の標的として多いのがアセチルコリン受容体で、全体の約85%を占めます。次いで筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)に対する抗体が数%みられます。一方で、これらの抗体がいずれも検出されないケースもあり、全体の10%未満とされています。このように、現在では約90%の患者さんで原因となる標的分子が明らかになっています。
しかし、自己抗体が作られる原因は、十分には解明されていません。遺伝的な要因や環境因子、免疫の調整異常などが複雑に関与していると考えられています。
また、抗アセチルコリン受容体抗体を持つ患者さんの約75%に、胸腺の異常(胸腺過形成や胸腺腫)がみられることから、胸腺が発症に関与している可能性が指摘されています。
重症筋無力症の検査と診断

重症筋無力症は症状だけで確定することが難しいため、複数の検査を組み合わせて総合的に診断します。ここでは主な検査方法と診断の考え方を解説します。
重症筋無力症の検査方法
重症筋無力症は、自覚症状の確認だけでなく、複数の検査を組み合わせて総合的に診断されます。
アイステストでは、氷水を約2分間まぶたにあて、まぶたの開きが改善するか(2mm以上)を確認します。続いて、エドロフォニウム(テンシロン)テストでは、神経と筋肉の間の伝達を一時的に改善する薬剤を静脈注射し、眼や全身の症状がよくなるかを評価します。
血液検査では、自己抗体の有無を調べます。抗アセチルコリン受容体抗体は全身型の多くの患者さんから検出され、抗MuSK抗体は一部の患者さんで認められます。また、重症筋無力症では甲状腺の病気を合併する場合があるため、甲状腺機能検査も行われます。
さらに、筋電図検査では筋肉に電極を装着し、神経刺激に対する反応を調べます。重症筋無力症では、刺激を繰り返すことで筋肉の反応が徐々に弱くなる特徴がみられます。
加えて、胸腺の異常を確認するために、胸部X線やCT、MRI、PET-CTなどの画像検査が行われ、胸腺過形成や胸腺腫の有無を評価します。
重症筋無力症の診断基準
重症筋無力症の診断は、症状・検査所見・生理学的所見を総合的に評価し、ほかの疾患を除外したうえで行われます。
症状は、眼瞼下垂や眼球運動障害、顔面筋の筋力低下、発音のしづらさ(構音障害)、飲み込みにくさ(嚥下障害)、噛みにくさ(咀嚼障害)、首や手足の筋力低下、呼吸困難などで、これらに疲れやすさ(易疲労性)や日内変が伴うことが重要な特徴です。
検査所見では、自己抗体の存在が確認されます。代表的なのはアセチルコリン受容体(AChR)抗体で、次いで筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体などがあり、いずれかが陽性であることが診断に大きく関わります。
さらに、反復刺激誘発筋電図や単線維筋電図などにより神経筋接合部の異常が確認されます。また、エドロフォニウム試験によって症状の改善がみられるかどうかも評価されます。
診断にあたっては、ランバート・イートン筋無力症候群や筋ジストロフィー、多発性筋炎、甲状腺機能亢進症、神経疾患など、似た症状を示すほかの病気の除外が不可欠です。
これらを踏まえ、診断は主に2つのパターンで行われます。ひとつは、特徴的な症状に加えて自己抗体が陽性である場合、もうひとつは、症状に加えて筋電図などで神経筋接合部の異常が確認され、かつほかの疾患が否定される場合です。
また、重症度はMGFA分類に基づいて評価され、眼の症状のみの軽症例から、全身の筋力低下や呼吸障害を伴う重症例まで段階的に分類されます。

