●犯行後◯分以内といった明確な基準があるわけではない
次に、現行犯逮捕では、犯罪を現に行っているか、行い終わったばかりである必要があります。
ただ、犯行後どのくらいの時間であればよいのか、ということには明確な基準はありません。
現行犯逮捕の事案では、たとえば犯行から1時間10数分後の現行犯逮捕を適法とするケース(東京地裁昭和62年4月9日判決)がある一方で、犯行終了時から40分後、現場から250〜300メートル離れた派出所内での現行犯逮捕を違法としています(大阪高裁昭和62年9月18日判決)。
これは、このような判断が時間だけではなく、犯行現場からの移動距離や、その間の監視の状況なども踏まえて総合的に判断されているためです。
たとえば、上の東京地裁の裁判例では、単に1時間以上経過した現行犯逮捕を一般的に適法としたわけではありません。
犯行直後から警察官が継続的に職務質問を行い、誤認逮捕防止のための事実確認を続けながら犯行現場と同一の駅構内の派出所で逮捕した、という事情があります。
本件では、場所は特に変わっていませんが、警察官が臨場するまでにどれくらいの時間が経っていたのかは、必ずしもはっきりしません。
●「逮捕の必要性」という別の問題
また、現行犯逮捕のためには、条文上明示されてはいないものの、「逮捕の必要性」も必要と考えるのが一般的です。具体的には逃亡のおそれや、証拠を隠滅するおそれがあることが求められます。
具体的な裁判例として、たとえば大阪高裁昭和60年12月18日判決では、身元が明らかで逃亡・証拠隠滅のおそれがないにもかかわらず逮捕した点について「必要性を欠く」として違法と判断しています。
また、東京地裁平成19年10月16日判決では、信号無視の現行犯逮捕につき「逃亡のおそれがなく必要性を欠く」として国家賠償を認めました。

