●逮捕が違法だったか検証する機会はおそらくない
これまで解説してきたとおり、今回の阿部氏の「現行犯逮捕」は本当に要件を備えていたのか、細かく考えていくと、かなり難しい問題だと思います。
このケースでは、阿部氏に警察署まで任意同行を促せばよかったとも思われます。
元々この事件の情報が「捜査関係者によると」ということだったため、もしかしたら任意同行と逮捕がどこかで混同されたのではないかとすら考えていました。
しかし、球団は広報文の中で「現行犯逮捕した」と明記しており、報道を特に否定していないため、現行犯逮捕したのはおそらく真実なのでしょう。
仮に逮捕が違法だったとしても、それを直ちに指摘して是正する手続きがあるわけではなく、またすでに釈放されているため、今後、この逮捕の適法性が裁判所で判断される可能性は非常に低いでしょう。
また、被害者である阿部氏の娘さんが処罰を望んでいないなどの事情があれば、不起訴の可能性は高いと思われます。
不起訴となれば、逮捕の適法性を司法が審査する機会はありません。
(参考文献) 「警察官のためのわかりやすい刑事訴訟法〔第2版〕」(加藤康榮編著・城祐一郎・阪井光平著、立花書房、2019年10月)
「判例講座 刑事訴訟法(捜査・証拠篇)第2版」(川出敏裕、立花書房、2021年10月)
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

