知っておきたい公的制度
不眠の治療が長期にわたる場合、費用の負担を軽減してくれる公的な制度があります。「診断がついてから」でも申請できるものがほとんどですが、制度の存在を早めに知っておくことで選択肢が広がります。
■ 高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)
1か月間の医療費の自己負担が一定の上限額を超えた場合、超えた分が後から払い戻される制度です。上限額は年齢と収入によって異なります。たとえば年収約370〜770万円の一般的な会社員であれば、月の上限は「80,100円+(医療費が267,000円を超えた分の1%)」となります。PSG(終夜睡眠ポリグラフ)の入院など高額な検査・治療を受ける場合でも、自己負担が抑えられることがあります。申請窓口は加入している健康保険組合または市区町村の国民健康保険窓口です。
事前に限度額適用認定証を申請することで、支払時に自己負担上限額まで支払を抑えることもできます。また、マイナンバーカード(マイナ保険証)でオンライン資格確認をすると自動で自己負担限度額が適用されるため、高額療養費の申請不要や、窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられるというメリットがあります。
■ 傷病手当金(しょうびょうてあてきん)
不眠症やうつ病などで仕事を休まなければならなくなったり、退職せざるを得なくなった場合に、会社員・公務員が加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合)から支給される給付金です。給与の約3分の2に相当する額が、休業4日目から最長1年6か月間支給されます。自営業者や国民健康保険加入者は傷病手当金の対象外となりますが、自治体によっては独自の支援制度を設けているところもあるため、市区町村の窓口に確認してみましょう。申請窓口は勤務先の人事・総務部門または加入している健康保険組合です。
■ 自立支援医療制度(精神通院医療)(じりつしえんいりょうせいど/せいしんつういん)
うつ病・不安障害・統合失調症などの精神疾患で継続的な通院治療が必要な方を対象に、精神疾患にかかる医療費の自己負担を通常の3割から1割に引き下げる制度です。不眠症単独では対象外となることが多いですが、うつ病や不安障害を合併している場合は申請できる可能性があります。所得に応じて月額上限が設定されている場合、指定医療機関・指定薬局での対象となる精神通院医療については、上限額を超える自己負担が原則発生しません。
申請窓口は市区町村の障害福祉担当窓口です。
こんな不眠は要注意――すぐに受診すべきサイン
「眠れない」と感じる程度の不眠であれば、まずは生活習慣の見直しで改善できることもあります。しかし、以下のような症状がある場合、背景に別の疾患が隠れている可能性があります。睡眠不足の慢性化は、高血圧・糖尿病・心疾患・認知症のリスクを高めることが複数の研究で示されています。放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。
こんな症状があれば受診を考えられる主な原因
1か月以上、週3日以上眠れない日が続いている不眠症(慢性不眠障害)
日中の強い眠気・仕事中の居眠りが続く睡眠時無呼吸症候群・過眠症
眠ろうとすると足がムズムズ・不快感があるむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
気分の強い落ち込みや不安を伴っているうつ病・不安障害
いびきが激しく、呼吸が止まると指摘された睡眠時無呼吸症候群(SAS)
市販の睡眠改善薬を飲み続けても改善しない薬剤性不眠・精神疾患の可能性
特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)は注意が必要です。放置した場合、高血圧・脳卒中・心筋梗塞などの重篤な疾患を引き起こすリスクが大幅に上がります。また、重症化してCPAP療法(シーパップりょうほう:就寝中に専用マスクで気道を広げる治療法)が必要になると、定期通院を含めて月々8,000〜20,000円程度の費用が生涯にわたってかかってしまいます。

