●検察は「行政不服審査の申立て」を知らなかった?
札幌地検は5月18日夕、臨時記者会見を開いて、地元報道に一連の経緯を説明した。
クラブ非加盟の立場で会見に参加した筆者は、清水雅晴次席検事に対して、行政不服審査との関係などについて質問した。大手メディアの記者の質問も含め、当日の主な質疑は次の通り。
なお、録音・撮影が制限されていたため、記録は取材メモと配布資料に基づく。
筆者:なぜ廃棄をしたのか。
次席:所有者も代理人も『放棄書』作成後に撤回してこなかった。
筆者:もし「やっぱりやめて」と言われたら廃棄は中止できたか。
次席:再検討はできるはず。
筆者:廃棄の少し前に本人が行政不服審査を申し立てているが。
次席:検察では把握していない。
筆者:警察から情報がいっていなかったということか。
次席:そういうこと。
筆者:最高裁判決確定後、中村弁護士が札幌地検に当該銃の返還を求めたが、これに「廃棄した」と答えるまでに4日間を要している。即答しなかったのはなぜか。
次席:単純に、確認に時間がかかったのだと思う。
筆者:銃の破壊・廃棄は具体的にどういう作業か。
次席:保安上の問題があり、あきらかにできない。
他社の記者:放棄書サインから廃棄まで4カ月。これは長いか短いか。
次席:どちらとも言えない。
他社の記者:最高裁判決についてはどう思うか。
次席:検察が関わっていない行政処分の話なので、答えられない。
つまり、検察は、池上さんの行政不服審査の申立てを知らなかったというのだ。
にわかには信じがたいが、会見での次席検事の回答はほぼ即答に近く、少なくとも現時点では、その説明を額面通りに受け取らざるを得ない。
●署名された銃を「所持取り消し」の対象にしていた
ただ、取材を進めると、別の疑問も浮かび上がる。
砂川警察署は2019年3月、道警・道公安委員会に対して、池上さんの銃所持許可取り消しを上申している。このときの上申で、砂川署は押収した4挺すべてを取り消し処分の対象とすべきとの考えを示していた。
しかし、そのうち1挺は、ほかでもない砂川署自身が「放棄書」への署名・捺印を得たとする問題のライフル銃である。
国庫に帰属したはずのライフル銃なのに、「池上さんの銃」として所持許可取り消しの対象にしていたことになる。
もし本当に所有権が失われていたのなら、なぜ公安委への上申対象に含めたのか──。
札幌地検は記者会見で「もし『やっぱりやめて』と言われたら」の問いに「再検討はできるはず」と答えている。
池上さんも中村弁護士も「やっぱりやめて」とは当局に伝えていなかった。理由は今さら言うまでもない。そもそも放棄に同意した覚えがなかったためだ。
一度所有権を失ったという認識があれば、その撤回も申し出られるところ、そもそも放棄した覚えがなければ「やっぱりやめて」とは言いようもない。

