●若くして亡くなった狩猟仲間の形見だった

「廃棄されたということは、譲ってくれた彼の思いを壊されたのと同じこと。私はそれで怒っているんです」
池上さんは会見の翌日の5月19日、砂川市内で筆者の取材に応じ、静かに怒りをにじませた。
廃棄されたライフル銃は、若くして亡くなった狩猟仲間の形見だった。病床で託され、大切に使ってきた1挺だった。
「その銃が戻ってきて初めて、裁判での争いがすべて終わった、ということになるんです。それを戻さないっていうのは、最高裁判所への冒涜でもありますよ」
さらに、こうも語った。
「刑事事件にならなかった時点で、警察はすべて返すべきだった。どう考えても処分する必要なんてないんだから。それをしなかったがために、7年もかけて争うことになったんでしょう」
あまつさえ一審で敗訴した公安委はこれを不服として控訴し、いたずらに争いを長引かせた。警察・検察の捜査も裁判所の審理もすべて公務、つまり税金由来の手続き。
7年間の費用を納税者として背負うことになった国民はこの間、各地の猟友会と行政との緊張関係の傍らで否応なくヒグマやツキノワグマの脅威にさらされ続けた。
この7年間あまりで猟銃の引き金を引くことをためらうことになったハンターは一人や二人ではない。
今回の裁判の判決確定によりいくらかでも事態が好転することが期待されるが、その傍らで現場の最前線を守るハンターがあまりに大きな代償を払うことになった。
二度とその手に戻らない銃について、池上さんは「もとの持ち主の所へ行った」と思うことにしているという。
「銃もさ、彼がいる所へ行ってしまったんだよ。そう思うしかないでしょう、なくなっちゃったんだから」
●「廃棄処分への疑義そのものは変わらない」
代理人の中村憲昭弁護士は近く、改めて検察を訪れ、「所有権放棄書」の現物を確認する予定だ。
もっとも、仮に池上さんの署名・捺印が確認できたとしても、中村弁護士は「廃棄処分への疑義そのものは変わらない」と話している。
今後の対応について、筆者は「たとえば国家賠償請求訴訟などの可能性はあるのか」と尋ねたが、現時点で池上さん側は、肯定も否定もしていない。

