元NHK副会長の今井義典さんが、5月28日に拡張型心筋症による心不全で亡くなったと報じられています。81歳でした。今井さんの訃報に接し、拡張型心筋症の初期症状・末期症状などについて、医師の小鷹悠二先生に解説してもらいました。

監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月東北大学病院循環器内科・同大学院医員 / 2017/4月~2018/5月仙台オープン病院循環器内科医長 / 2018/5月~おだかクリニック副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。
「拡張型心筋症」とは?
心臓は4つの部屋に分かれている、筋肉で覆われた臓器であり、それぞれの部屋が連動して動くことによって血液を送り届けるポンプのような働きをしています。
拡張型心筋症では、心臓の筋肉が収縮して血液を送り出す働きが弱ってしまうことで、心臓の部屋(特に左下の左心室)が拡張してしまう状態となる病気です。
拡張して心臓の部屋が大きく膨らんでしまい、心臓の筋肉もうまく収縮できなくなるため血液の循環がうまくできなくなる、心不全状態を引き起こしてしまいます。
拡張型心筋症の代表的な症状
症状としては心臓の機能が低下してしまうことによる、心不全症状が出現し、以下のような症状を呈します。
息切れ、呼吸の苦しさ(呼吸困難感)
心不全症状を引き起こした場合に生じやすい代表的な症状の一つです。
心不全による典型的な呼吸苦症状は、横になった際に心負荷で肺にたまった胸水が肺全体に広がるため呼吸の苦しさが悪化し、体を起こすと楽になる起坐呼吸という症状があります。
それ以外にも、動いたときに息切れが出現し易くなることもあるため、それまでできていた動作で息が切れるようになってきた際には、心不全の可能性も疑う必要があるため、早めに病院を受診する必要があります。起坐呼吸は心不全が急に進行した場合等によく生じるため、自覚する場合には救急外来の受診など、速やかな受診が必要です。
動くのが大変な呼吸困難が生じる際には緊急性が高い可能性もあるため、救急要請を検討しましょう。
胸痛
心筋梗塞や狭心症だけでなく、心不全でも、心臓に栄養を送っている冠動脈の血流が低下してしまうと胸痛を生じます。典型的な心臓の血流障害の症状としては、胸の中心~左側の締め付けられる様な、押しつぶされるような強い胸痛であり、冷や汗を伴うような強い症状のことも多く、左肩~顎や奥歯まで苦しくなる放散痛を伴う事もあります。
数分で改善しないような強い胸痛の場合は、速やかな救急要請が必要となる、緊急性が高い状態となっている可能性が高いです。
もし短時間で落ち着いたとしても、それまでなかった症状が出現している際には早期の循環器科受診が必要です。
動悸
心臓の機能が低下することで不整脈が出現しやすくなってしまい、動悸症状が出現する事があります。動悸と一言で表現しても、様々な症状を動悸と表現する事があります。そのため、動悸の場合には脈が速い状態なのか、脈の乱れがあるのか、脈が速くも乱れてもいないが鼓動だけ強く感じるのか、ということが伝えられると、より早い段階で診断・治療に結び付けることができます。
脈のリズムが数拍乱れるような期外収縮が出現しやすいですが、拡張型心筋症のような特殊な心筋症で、心機能が大きく低下してしまうと、心室頻拍などの危険な不整脈を生じることがあります。動悸以外に胸痛や強い呼吸苦症状、失神などの意識の異常を伴う場合には緊急性が高い可能性があるため、救急要請も検討が必要です。
拡張型心筋症では、心室細動のような非常に危険な不整脈を出現するリスクもあるため、突然死の危険もあります。
めまい、ふらつき、失神
心不全によって体の血液の循環に障害が生じ、脈がゆっくりとなる不整脈や、極端な頻脈が生じることで出現する事があります。ほかにも、心臓がうまく動けない状態となるため、脱水などで体を循環する血液量が減少することで出現しやすくなります。
症状を自覚したら、まずは転倒・失神等をしないように座り込むか横になりましょう。
そして可能であれば自分で脈をチェックし、脈の速さの異常や乱れがないかを確認してください。脈がゆっくりになり過ぎる不整脈が原因の場合には、ペースメーカー埋め込み術等が必要となる事があります。
失神まで起こす場合は、緊急での処置を必要とする状態の可能性もあるため、できる限り速やかな受診が必要です。
心臓病が原因の失神は、徐々に気が遠くなるというよりは、突然ブツンと意識がなくなる、気が付いたら倒れていたというタイプの症状が多いため、このような症状では特に注意が必要です。

