重症筋無力症で筋力が低下する理由

神経から筋肉への運動の指令を伝える物質の受け渡しが、自己抗体によって邪魔されてしまうからです。
重症筋無力症の患者さんの体内では、前述した自己抗体がこの一連のプロセスを徹底的に阻害します。抗AChR抗体が存在する場合、筋力低下を引き起こす仕組みとして以下の3つが挙げられます。
受容体の破壊
受容体の機能阻害
受容体の減少促進
健康な状態であれば、神経から放出されるアセチルコリンの量は、筋肉を動かすのに必要な量よりもはるかに多く設定されており、情報の伝達には安全域と呼ばれる余裕があります。しかし、重症筋無力症では受け皿となる受容体が極端に減っているため、この安全域が完全に失われています。
重症筋無力症と胸腺の関係とは

重症筋無力症の発症に深く関わっているとされる胸腺の役割と異常を解説します。
胸腺とは
胸腺は、免疫細胞を教育し、自分自身の身体を攻撃しないように訓練するためのたいへん重要な役割を持つ臓器です。
胸腺は胸の中央、胸骨の裏側あたりに位置する小さな臓器です。骨髄で作られた未熟な免疫細胞であるリンパ球は、血液に乗って胸腺に運ばれます。胸腺の内部は、いわば免疫細胞の厳しい学校のような場所です。
重症筋無力症と胸腺の関係
本来であれば年齢とともに萎縮して小さくなるはずの胸腺が、重症筋無力症の患者さんでは異常な状態になっていることが多く確認されています。重症筋無力症の患者さんに見られる胸腺の異常には、主に以下の2種類があります。
胸腺過形成
胸腺腫
胸腺に異常が生じると、本来行われるべきである自分自身を攻撃する細胞を排除する教育がうまく機能しなくなります。その結果、アセチルコリン受容体を敵とみなす異常なT細胞が生き残り、血液中へ放出されてしまいます。この異常なT細胞が、抗体を作る細胞に指令を出すことで、自己抗体が絶え間なく作られ続ける状態になってしまうと考えられています。

