子どもの一日は、親が思う以上に「切り替え」の連続
何気ない一日のなかでも切り替えが続いている
子どもは、学校から帰ってくると家でのんびりしているように見えることがあります。ソファでぼんやりしていたり、床に座り込んだまま動かなかったりして、親の目には余裕があるように映るかもしれません。でも、その一日を細かく追ってみると、実は多くの切り替えを重ねていることに気づきます。
まず、子どもは朝起きて身支度をし、学校へ向かい、授業を受けます。そして授業が終われば休み時間に入り、友だちと交流します。友だちとの関係でも、相手に合わせたり、場の空気を読んだりする場面が重なるものです。この時点で、すでに「聞く」「書く」「動く」「待つ」といった行動の切り替えが起きています。
そして、休み時間が終わるとまた授業に戻り、集中しはじめます。その後も給食や掃除、下校まで、場面ごとに求められる振る舞いは変わり、そのたびに頭のなかでは気持ちや注意の向き先を切り替えています。目立ったトラブルがなくても、気を使う時間は一日中続いているのです。
学校を終えてからも、切り替えは止まりません。下校して帰宅し、宿題をしたり、習い事へ向かったりします。夕方には食事や入浴、次の日の準備が待っています。ひとつひとつは短い時間でも、次へ次へと移る流れが続くと、気持ちを落ち着ける余地がなくなってしまいます。
何もしていない時間は脳の回復タイム
一方で、親からすると、子どもが何もしていないように見える時間があります。帰宅後にリビングでくつろいでしばらく動かず、ぼんやり過ごしている場面に遭遇したとき、つい「まだ宿題が終わっていないのにゴロゴロしているのか」「ちゃんと明日の準備は済ませているのか」と気になってしまうかもしれません。しかし、その時間は、外で使った力を回復しようとしている大切な過程です。いろいろなスケジュールをこなして切り替えが続いたあとには、いったん止まる時間が必要だといえます。
授業に、友だちとの会話に、習い事にとモードを切り替えることは、子どもの脳内で起こっているだけに気づかれにくく、その大変さはスルーされがちです。けれども、こうした動きは、知らないうちに脳への負荷として蓄積していきます。
とくに、度重なる切り替えの合間に休息がはさまらない状態が続くと、回復へと向かう余地がなくなってしまい、たまった疲れはなかなか抜けてくれません。
まずは、予定の多さだけで子どもの一日を判断しないようにしましょう。やることが少なくても、切り替えが多い日はあります。反対に、予定が詰まっているように見えても、その流れが穏やかで負担が少ない日もあります。注目したいのは、切り替えが続いていないか、その間に力を抜ける時間があるかどうかです。
子どもが家で何もしていないように見える時間は、ただ怠けている時間とは限らず、次の行動に向かう前に、いったん力を取り戻そうとしている時間かもしれません。その時間を無理に次へつなげようとすると、切り替えがさらに重なり、疲れが抜けにくくなってしまいます。
何もしていない時間を、ただの空白として扱わず、回復に向かう一部として受け取りましょう。その視点が、この先の関わり方を考える土台になります。
切り替えが続くと脳は疲れる
起床から入浴まで、子どもの一日は切り替えの連続です。ひとつひとつは短くても、その積み重ねが脳への負担になります。

イラスト:しゅんぶん
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子ども脳疲労
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※本記事は、『子ども脳疲労』<著:成田 奈緒子/日本文芸社>より抜粋・再編集して作成しました。
成田奈緒子小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。 1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。近著に『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(共著、SBクリエイティブ)がある。→記事一覧へ