●賠償額を左右した「公序」の成立時期
一審と二審を分けた最大のポイントは、「無期雇用者同士の待遇格差を許さないという考え方が、いつ法的に保護される“公序”として成立したのか」という点だった。
一審は、職務の同一性が認められるようになったおおむね2012年4月以降を救済対象とした。これに対して、二審は、働き方改革関連法の施行日である2020年4月を公序成立の時点とし、それ以前の待遇差について違法と認めなかった。
今回の女性は無期雇用だったが、「無期なのに正社員ではない」という待遇格差は、有期契約から無期転換した労働者にも共通する問題であり、実務への影響は小さくない。
●専門家「立法の不備が生んだ問題」
今回の判断をどう見るべきか。労働法にくわしい笠置裕亮弁護士に聞いた。
──無期雇用者同士の待遇格差を禁じる規定がない現状をどう評価しますか。
端的にいえば、立法の不備だと考えています。
2013年4月に無期転換ルールが導入された時点で、無期雇用者同士にも不合理な待遇格差が生じうることは当然予想されていました。
無期転換ルールは、いつ雇止めされるかわからず、雇止めされた場合に法的な救済を求めにくい有期契約労働者の雇用を安定させるために設けられた制度です。
しかし、無期転換後も待遇が低いままでよいわけではありません。
そもそも有期契約労働者の処遇改善を図る旧労働契約法20条と同時に制定された規定で、これらは両輪となって、有期雇用労働者の均衡均等待遇を実現する方向で機能することが想定されていたのです。
実際、立法時にもそれを反映した当時の厚労副大臣の発言(※)があります。
ところが残念ながら、無期雇用者どうしの待遇格差の是正は進みませんでした。
政府の審議会で、労働側から、無期雇用者同士の待遇格差を是正するルール作りの必要性が主張されたのですが、経営側の反対に遭い、法改正が見送られてしまったという経緯があります。
本来は、無期転換ルールの制定と同時に、立法的な解決が図られるべきだったと考えます。

