多発性硬化症の治療法

再発時の炎症を抑える急性期治療、再発や進行を抑える長期の疾患修飾療法(DMD)、症状を和らげる対症療法やリハビリテーションの3本柱で行います。
急性期治療
副腎皮質ステロイドを高用量で点滴するステロイドパルス療法が標準的な治療として行われます。通常はメチルプレドニゾロンを数日間連続で静脈注射し、炎症をできるだけ早く鎮めて神経障害の軽減を目指します。症状の改善が不十分な場合には、血液中の自己抗体などを取り除く血漿浄化療法が追加されることもあります。
再発・進行予防
再発や進行を抑えるために疾患修飾療法(DMD)と呼ばれる長期治療薬を継続して使用します。インターフェロンβ製剤やグラチラマー酢酸塩などの注射薬に加え、近年はフィンゴリモドやジメチルフマル酸などの内服薬、さらにナタリズマブやオファツムマブなどの点滴・皮下注射の抗体製剤も選択肢になっています。
これらの薬剤は、それぞれ作用機序や効果・副作用が異なるため、病型やこれまでの再発歴、妊娠希望の有無、生活スタイルなどを医師と相談しながら、適切な薬剤を選び、定期的な検査で安全性を確認しつつ長期的に続けていきます。
対症療法
手足のつっぱり(痙縮)にはバクロフェンなどの抗痙縮薬、痛みやしびれには鎮痛薬や抗てんかん薬、排尿障害には抗コリン薬、気分の落ち込みには抗うつ薬などを用い、それぞれの症状に合わせて薬を調整します。
さらに、筋力やバランスを維持するリハビリテーション、装具の活用、便秘や疲労への生活指導などを組み合わせることで、日常生活をできるだけ自立して送れるよう支援します。
多発性硬化症についてよくある質問
ここまで多発性硬化症などを紹介しました。ここでは多発性硬化症についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
多発性硬化症は遺伝する病気ですか
伊藤 規絵医師
多発性硬化症は親から子へ遺伝する病気ではありません。一般的な遺伝病のように、特定の遺伝子1つで発症が決まるわけではなく、発症のしやすさに関わる複数の体質遺伝子と、環境要因が重なって起こると考えられています。
難病情報センターでも、親から子に病気そのものの遺伝はない一方で、アレルギー体質と同じようになりやすさに関わるHLA(ヒト白血球抗原)などの遺伝子が受け継がれる可能性はあると説明されています。そのため、家族に多発性硬化症の方がいても、多くの方は発症せず、心配しすぎないことも大切です。
多発性硬化症は命に関わる病気ですか
伊藤 規絵医師
適切な治療や再発予防の薬物療法を続けることで、昔と比べて長期的な見通しが大きく改善してきている病気です。発症から長い年月が経っても、治療やリハビリテーションを続けながら、仕事や家事、子育てなどの日常生活を送っている方も少なくありません。
一方で、病気の経過には個人差があり、再発の頻度や障害の程度によって将来の見通しは変わるので、主治医と相談しながら、その時々の体調に合った治療や生活調整を続けていくことが大切です。

