俳優の佐藤二朗と女優の橋本愛を巡る騒動が、芸能界を揺るがす大きな事態へと発展している。1日の「週刊文春 電子版」の報道を発端としたこの問題は、当事者である佐藤の反論、両所属事務所による声明公表、そしてフジテレビの公式コメントの発表を経て、双方の主張が真っ向から対立する展開となった。それだけではなく有名脚本家や演出家、法律家やハラスメントまでさまざまな専門家から言及が行われた。
そして8日の文春電子版や週刊誌の報道に注目が集まるなか、7日にフジテレビが再び5000字以上に上る声明を発表し、佐藤、橋本に謝罪。 さらに翌8日、文春電子版が佐藤に関する続報を掲載する一方で、9日には「週刊新潮」が佐藤への独占インタビューを掲載。「文春」報道は事実関係が大きく歪められていると主張し、フジテレビ側のコンプライアンス担当弁護士の「要求」により、自身が精神的に追い詰められていたと告白するなど、事態はメディアを巻き込んだ情報戦の様相を呈している。この記事では、複雑化する一連の経緯と、各声明から浮き彫りになった「認識のズレ」を詳細に整理する。
事の始まりは1日、文春電子版が同局系ドラマ「夫婦別姓刑事」の撮影現場において、主演の佐藤がダブル主演の橋本に対してハラスメント行為を行ったと報じたことだった。橋本は過去に舞台の現場でハラスメント被害を受け、 トラウマを抱えていたという。このため、「共演者との身体接触」に制限を設けていた。
報道を受けて佐藤は1日、自身のXを更新。「さすがに、さすがにもうこれ以上は我慢できません。僕は撮影中、何度も『もう我慢の限界だから、このドラマを降板させてほしい。そして全ての事実を公にするべき』と訴えました。もっと早く決断するべきでした。数々の『ほんとうのこと』が、明らかになる日が来ることを、切に祈ります」と投稿し、率直な思いを露わにした。
同日、佐藤の所属事務所であるフロム・ファーストプロダクションも詳細な反論声明を発表した。声明によると、今年3月22日の第1話撮影中、橋本のトラウマを知らされていなかった佐藤が、コミカルなシーンの芝居中に橋本の顎に指が触れてしまったことが発端だという。翌日、プロデューサーから橋本の事情が明かされ、話し合いの末に肩と腕以外を触るときは事前確認が必要というレギュレーションが決定された。事務所側は、なぜ事前にこの情報が共有されなかったのかについて、フジテレビ側および橋本側とのやり取りの経緯を説明。日常の芝居には問題がないとの判断から、佐藤の芝居に制限をかけないために直前まで伝えない方針をプロデューサーの了解のもとで取っていたと言及した。さらに、佐藤が撮影終了後に橋本の楽屋を訪れ、俳優としての持論を伝えたエピソードを明かし、一連の言動は専門家からもハラスメントには当たらないとの確認を得ていると主張した。
しかし、翌2日にフジが発表したコメントは、佐藤側の主張とは異なるニュアンスを含んでいた。同局は記事の掲載中止を文春側に申し入れていたとしつつも、「当社から男性俳優の言動について、厳重注意を行うとともに、再発防止を求めたことは事実」と認めた。問題視したのは顔への接触ではなく、「男性俳優が女性俳優が演技上の制約を有することになった経緯を認識しながら発した言葉等」であり、それが外部弁護士による調査において問題視されたためだと説明。さらに「過去に辛い経験をされた方に対して、それによる不自由や制限を当然に受け入れるべきだという意見には与しません」とし、そのような言葉を投げかけることこそが、二次加害や誹謗中傷に他ならないという姿勢を示した。
これに対し、佐藤は3日の朝に再びXを更新。「勿論、偏った記事とは思ってましたが、ここまでとは。ステレオタイプの『か弱い若い女性』と『典型的な昭和のパワハラオヤジ』を完全に創作してる」とし、さらに「最大級の『注意』や『警戒』が必要と痛感していた僕が、そんな態度を取れる訳がない。自分の身を守る為にも。嘘はやめて下さい」とつづった。
だが、同日夜には橋本の所属事務所であるEDENが公式声明を発表。EDEN側は「報道された件に関し、当社及び当社俳優は、フジテレビ社より、弁護士による当事者・関係者ヒアリングを経て、経緯および認定された事実等の報告を受けており、フジテレビ社による報道が事実との認識です」と表明。また、橋本に対する過剰な誹謗中傷が確認されているとして、警察に相談の上、刑事および民事上の厳正な措置を講じる構えを見せている。
そして7日、フジが「当社ドラマ制作に関するご説明」と題し、詳細な経緯を説明した。
これを受けた形で佐藤も同日夜、「フジテレビは、なぜ、そこまで片方だけに寄り添うんでしょうか。残念です。ごめん本広さん。『踊る』関係者の皆様、本当にすみません。映画本編も、僕のところは全てカットしてほしい。フジの局員にも関わらず、僕に激励のメールくれたみんな、ごめん。僕は心から、もうフジとは関わりたくないです」と投稿。一度は9月18日公開予定の映画「踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!」で自身が登場するシーンのカットを要望したが、「本当にすみません。どなたかのお叱りの指摘が至極正しいと思い。撮り終えたシーンを『カットして』は本広さんは勿論、多くに迷惑をかけます。その部分は心より謝罪し、取り消します」と修正し、「使われてもカットでも、僕に異論はございません。そしてこれもご指摘が正しいと思い。投稿、これを最後にします」とつづっていた。
①フジテレビ「7月2日のコメント」からアップデートされた内容
・詳細な時系列と経緯の開示
プライバシー侵害や二次被害の防止を理由に「詳細を申し上げることはできない」としていた前回の基本方針を転換。オファー時から撮影終了、その後の対応に至るまでの具体的な事実関係を時系列に沿って詳細に開示した。

