治療の目標は“湿疹がほとんどない状態”を維持すること

アトピー性皮膚炎治療の基本となるのは、皮膚を清潔に保ちしっかり保湿するスキンケアと、必要に応じて抗炎症薬を使う治療です。加えて、この数年で治療の選択肢は増えています。
「2018年頃まで治療の中心は保湿剤とステロイド外用薬で、それ以外の選択肢は限られていました。そのため『悪くなったら薬を塗る』『よくなったらやめる』を繰り返す状況が少なくありませんでした。
現在は考え方が変わり、目標は単に悪化している状態を乗り切ることではなく『湿疹がほとんどない状態を維持すること』です。かゆみが少なく、よく眠れ、家族の負担も軽い状態を長く保つことが重視されています。新しいタイプの外用薬が登場し、さらに重症例では飲み薬や注射薬による全身療法も選択できるようになりました」(長尾先生)

近年では、治療の幅が広がったことで、子どもの年齢や症状、生活状況に合わせた治療が可能になっています。
「大切なのは『治らないから仕方がない』とあきらめないことです。アトピー性皮膚炎は皮膚だけの病気ではなく、睡眠や食事、園・学校生活、家族の暮らしにも影響します。だからこそ、困りごとは家庭で抱え込まず、ぜひ医療機関に相談してほしいです」(長尾先生)
辻希美さん「知っているかどうかで選択肢が大きく変わる」

イベント後半では、5人の子どもを育てるタレントの辻希美さんが登壇し、長尾先生とトークセッションを行いました。
辻さんは、子育ての中で赤ちゃんの肌トラブルに触れる機会が多いことに触れ、「赤ちゃんのころは湿疹が出ることが多いと感じます」と、ママの目線から語りました。
トークでは「アレルギーマーチ」についても話題に。辻さんは「アレルギーマーチという言葉を初めて聞きました」と驚いた様子を見せました。辻さんと同じく、調査では約7割の保護者がこの言葉を「初めて知った」と回答しており、まだあまり認知されていないことがうかがえます。
長尾先生から「アレルギーの連鎖を断ち切るためには、最初に起こるアトピー性皮膚炎の症状をしっかり改善していくことが大切」と説明を受けると、辻さんは「子育て中は毎日バタバタしていて、どうしても目の前のことしか見えなくなりがち。今だけではなく将来も見据えて考える必要があると感じます」と話しました。

さらに「3歳・6歳・12歳は治療を見直すタイミング」という考え方について、辻さんは「子どもが5人いると、アレルギーを持っている子もいます。入学や卒業など環境が変わることで、症状の変化を感じることもあります」と自身の子育て経験を交えながら話しました。長尾先生も「生活環境の変化によって症状に影響が出ることがある」とし、成長の節目に治療や生活を見直す大切さを改めて伝えました。
また、長尾先生は、治療の選択肢が増えたことによって「症状がほとんどない状態を目指せる時代になりましたが、その情報がまだ十分に知られていないことが課題です」と指摘。辻さんは「知っているかどうかで選択肢が大きく変わると思います。1人でも多くの保護者の方に、この情報が届いてほしいです」と語りました。

(取材・文:早川奈緒子/マイナビ子育て編集部)
