日本の成人の3人に1人が該当するとされる高血圧は、今や『国民病』といえる身近な病気です。テレビやネットで「血圧を下げる方法」といった特集が多数報道される中、「血圧が高めと言われたけれど、まだ薬には頼りたくない」「無症状なのになぜ血圧を下げなきゃいけないの?」と感じている人もいるかもしれません。しかし、高血圧を放置することは、将来の健康を大きく損なうリスクに直結します。今回は、総合診療医として日々高血圧の診療や生活習慣指導を行っている舛森(ますもり)先生に、高血圧を放置するデメリットや、薬に頼らず血圧を下げる具体的な方法について詳しくお話を伺いました。

監修医師:
舛森 悠(YouTube医療大学)
2019年旭川医科大学卒業後、札幌にて初期研修をおこない、函館稜北病院総合診療科へ。北海道内の3次救急を担う救命救急センターなどを経て、現在は千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学共同専攻 博士課程にて研究に従事。並行して北海道での地域医療に貢献し、登録者96万人を誇る「YouTube医療大学」を運営。一般社団法人とまりぎケア代表理事、総合診療専門医、新家庭医療専門医、認知症予防専門医、医師会認定産業医。
≫【簡単】薬に頼らず、〇〇食べれば高血圧 下がります【医師が実践】高血圧の定義とは? 基準値は“自宅測定”で「135/85mmHg」
編集部
血圧が高いと指摘されたことがある人は多いと思います。そもそもどこからが高血圧なのでしょうか?
舛森先生
「自宅で測った血圧が『135/85mmHg』を上回っている」ようであれば、高血圧を疑ってください。
編集部
病院ではなく、自宅で測った血圧が重要なのですか?
舛森先生
そのとおりです。病院だと緊張して心拍数が上がり、普段より血圧が高く出てしまう「白衣高血圧」の人もいれば、病院では正常なのに自宅では高血圧という「仮面高血圧」の人もいるためです。
仮面高血圧の場合、通常の高血圧の人と同じくらい血管の病気になるリスクがあると言われています。「病院では低かったから大丈夫」と思い込まず、朝起きて少し経った後と夜寝る前の1日2回、1週間、頑張って血圧を測り、平均値を出してみてください。私たち医師が病院で「血圧や血糖値を下げましょう」と啓発しているのは、「未病」の段階でリスクを下げてもらいたいという医療者からの切実なメッセージなのです。
脳や心臓の病気は「動脈硬化症」に起因――要介護の原因にも
編集部
血管の病気になるリスクがあることはわかりましたが、なぜ「未病」時点から血圧や血糖値を厳しく管理しなければならないのでしょうか?
舛森先生
一番の理由は「将来、介護が必要になる状態を防ぐため」です。
厚生労働省の統計データによれば、介護が必要となる原因の1位は「認知症」で、次点が脳梗塞などの「脳血管疾患」です。脳梗塞になると体の麻痺や感覚の鈍り、言葉が出づらくなるといった症状が出て、周囲のサポートなしでは生活が難しくなります。さらに、心筋梗塞や狭心症といった心疾患も要介護の原因として多く、脳血管疾患と心疾患の2つを合わせると認知症を超える頻度になります。
編集部
脳梗塞や心筋梗塞は予防できるのでしょうか?
舛森先生
はい。加齢は避けられませんし、認知症を完全に防ぐのは難しい面もありますが、脳血管疾患と心疾患はしっかりと予防につなげることが可能です。
これらの病気はどこから生じるかというと、ズバリ「血管」の異常です。動脈が傷ついたり、プラークという油の塊が溜まって血管が細くなったり、血栓が詰まったりする「動脈硬化症」が原因となり、脳や心臓に血流がいかなくなって発症します。
編集部
「動脈が硬くなる」と聞くと、逆にがっしりして丈夫になるような気もします。
舛森先生
それは間違いです。例えば、「ガラス」でできている血管と「ゴム」でできている血管では、どちらが丈夫だと思いますか? ガラスでできた血管はたしかに硬いものの、少し衝撃や圧力が加わると割れてしまいますよね。一方、ゴムでできた血管は圧がかかっても、しなやかにしなって破れにくいことが想像できるでしょう。
このように「硬くなった血管(動脈硬化症)は圧に弱く破れやすい」というリスクがあります。脳血管疾患の一つであるくも膜下出血も、動脈硬化症によって脳の血管が破れてしまうことが原因と言われています。

