●車両を発進させた時点から「監禁罪」成立
3つ目の争点は、監禁罪の始期である。被告人は、道の駅で少女を車に乗せた際の「黙って乗ってろよ。バッタバタにしてやるから」という発言について、公判では心の中で思っただけである旨供述していた。
裁判所は、この供述には「供述が変遷した合理的な説明はなく」、信用できないと判断した。
当時17歳の少女が、暴力団構成員との関係をうかがわせる被告人から因縁をつけられ、夜中に人けのない場所で会うことになった状況などからすれば、「乗車を自由な意思で選択したとは考えられない」とした。道中に「帰りたい」と車から出ようとしていたことも、その裏付けになるとした。
こうして、「(少女)を道の駅で車両に乗り込ませ、これを発進させた時点から」監禁罪が成立すると認定した。
●両手で「押した」とは認定せず
神居古潭・神居大橋での事実認定は、共犯者である小西被告人の供述の信用性に大きく関わっていた。
裁判所は、小西被告人の供述が自己に不利益な暴行・脅迫についても明確であること、橋上の状況をビデオ通話で把握していたXの供述とも整合すること、被告人自身も全裸にして土下座させたことや橋上での暴行・脅迫を認めていることなどから、信用できると判断した。
もっとも、「被告人が、(少女)の肩甲骨の辺りを両手で押した」という部分については、裏付けがなく、供述の経過や変遷の理由も明らかでないなどとして、信用性を「断定することまではできない」とし、押したとは認定しなかった。
●裁判所が認定した事件の経緯
裁判所が認定した事実経過の概要は、次のとおり。

2024年4月18日夜、少女(当時17歳)が、被告人の写った画像を無断で自身のインスタグラムに投稿した。これを知った被告人は少女に電話をかけ、Xに暴力団構成員のふりをさせるなどして因縁をつけ、一人で来るよう伝えた。
同日午後11時37分ごろ、留萌市の道の駅で少女と合流し、助手席に乗せて旭川市内へ向かった。裁判所は、この時点から監禁罪が成立すると認定した。被告人はスマートフォンを取り上げ、高速道路上で「帰りたい」と車外に出ようとした少女を暴行で阻止した。
翌19日未明、旭川市内の小学校駐車場で土下座と謝罪を強要して動画撮影し、50万円の支払いを要求。午前3時6分ごろ、コンビニに立ち寄ると、少女は店員に通報を依頼して助けを求めたが、被告人と小西被告人は引きずり出して暴行を加えた。
その後、神居古潭の駐車場で少女を全裸にさせ、着衣を投棄して土下座を撮影。神居大橋では「死ね」「落ちろ」などと怒鳴り、欄干の外側の狭い床板部分に立たせた。
少女は上体を前に傾けた後に落下し、溺水による窒息で死亡した。気温は摂氏5度前後で、小雨が降っていた。橋の直下約13メートルには急流の石狩川が流れている。
裁判所は、被告人が少女を突き落とした事実までは認定していない。
●【判決要旨】罪となるべき事実
被告人は、
第1 被告人が写った画像データを無断で使用したAを監禁しようと考え、小西優花(以下「小西」という。)、X及びYと共謀の上、令和6年4月18日午後9時頃から同日午後11時37分頃までの間に、Aに対し、電話で、「どう落とし前つけんの、誰にけんか売ってんの。」などと語気鋭く言うなどした上、北海道留萌市の道の駅において、Aを同所に停車中の軽四輪乗用自動車に乗り込ませ、同自動車を発進させて、同日午後11時37分頃から同月19日午前3時29分頃までの間、走行中の同自動車内でAの動静を監視するなどして同所から旭川市神居町神居古潭神居大橋に至るまで同自動車を走行させるなどし、Aが同自動車内等から脱出することを著しく困難にし、もってAを不法に監禁し、
第2 前記第1のとおりAを前記自動車に乗車させて北海道留萌市内から前記神居大橋に至るまで同自動車を走行させ、その間に、旭川市内のコンビニ等において、Aに馬乗りになってその顔面を殴打するなどの暴行を加えるなどしてAを監禁したものであるが、小西と共謀の上、令和6年4月19日午前3時29分頃から同日午前3時48分頃までの間に、前記神居大橋付近において、Aに対し、Aが前記暴行を伴う一連の虐待に起因する心理的反応により同意しない意思を全うすることが困難な状態にあることに乗じ、その着衣を脱ぐよう命じてAを全裸にさせ、Aに土下座して謝罪させている状況を携帯電話機で動画撮影した上、前記神居大橋において、Aの腰部を蹴るなどの暴行を加え、Aを前記神居大橋の欄干に座らせて謝罪させている状況を携帯電話機で動画撮影するなどのわいせつな行為をし、その頃、同所において、殺意をもって、前記一連の暴行等により被告人及び小西を極度に畏怖するなどしているAを前記欄干に再度座らせ、Aに対し、「落ちろ。」「死ねや。」などと言うなどしてAを前記神居大橋からその直下を流れる石狩川に落下させ、よって、同日頃、Aを溺水による窒息により死亡させて殺害した。
●【さらにくわしく】
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