災害時にも生きる「地域の推奨薬」
地域で薬を絞り込む利点は、災害時にも表れます。2024年1月に発生した能登半島地震では、薬を積んだ「モバイルファーマシー(移動薬局)」が被災地に派遣されました。しかし積める薬には限りがあり、普段の処方どおりの薬がそろわない場面が生じます。すると、「限られた薬の中から同等の薬を探し、処方した医師に問い合わせる作業」が、混乱した現場で発生します。
地域ごとに推奨薬がまとまっていれば、それを参考に薬を選んで持っていくことができます。成田先生は、地域フォーミュラリは災害時にも役立つ考え方だと語ります。
なぜ「地域」で取り組むのか
国が強い権限で薬を絞り込めれば話は早いものの、実際にはよく使われる薬は地域ごとに異なります。東京で多く使われる薬をそのまま地域に持ってきても、現場には受け入れられにくいのが現実です。だからこそ、その地域で受け入れやすい推奨薬を地域ごとに定める必要がある、というのが「地域フォーミュラリ」の考え方です。
先行例として成田先生が挙げるのが、2018年に山形県・酒田地区で始められた取り組みです。推奨薬の多くは後発医薬品(ジェネリック)のため、処方が推奨薬に変わると、先発医薬品からジェネリックへの切り替えが進みます。成田先生によれば、酒田地区だけでも年間で数億円規模の医療費削減効果があったといい、全国に広がれば数千億円規模になりうると話します。医療費の抑制は、保険料や税金を負担する私たちにも関わる話です。
成田先生が関わる札幌・手稲地区でも、推奨薬を定めてから2年ほどの間に第1・第2の推奨薬の処方が増え、それ以外の薬は減る傾向がみられたといいます。今後は対象とする薬の種類を広げ、学会でも報告したいと話します。

