死亡者減をより確固たるものに
熱中症の重症化を防ぐカギは、体をいかに早く冷やすかにあります。
熱中症診療ガイドライン2024では、従来Ⅰ〜Ⅲ度だった重症度分類を見直し、Ⅲ度の中でも特に注意を要する最重症群を新たに「Ⅳ度」と位置づけました。深部体温(直腸や膀胱[ぼうこう]などで測る体の内部の温度)が40℃以上で、強い意識障害を伴う状態です。さらに、現場ですぐに判断できるよう、深部体温を測る前でも皮膚の強い熱感と意識障害があれば最重症に準じて対応する「qⅣ度(クイックⅣ度)」という考え方も示されました。
会見では、最重症とされた患者さんについて、深部体温を測った群では冷却がおよそ9割で実施され、亡くなった人は約2割だったのに対し、体温を測らなかった群では冷却がおよそ6割にとどまり、亡くなった人が4割近くに上ったとするデータが紹介されました。
神田先生は、深部体温の測定とアクティブクーリングがいかに重要かを裏づける結果だと述べました。あわせて、Ⅳ度に達していなくても一定数の死亡が生じており、「Ⅳ度でなければ冷やさなくてよい」という理解は適切ではないと注意を促しました。
今回策定した手引きを通じて、死亡者の減少をより確固たるものにしたい、と神田先生は話しました。
把握しにくい熱中症の「実態」
会見の後半では、スマートフォンで症状を入力すると熱中症の重症度と対処法が表示される「熱中症判定フリーアプリ」の開発状況と、福岡県での実証開始について、同委員会担当理事で日本医科大学大学院 医学研究科 救急医学分野 教授の横堀將司先生が説明しました。
会見でまず横堀先生が指摘したのは、熱中症の被害の実態が「即時に把握しにくい」という現場の課題です。
熱中症による救急搬送者数や死亡者数、重症患者数が集計されて世の中に届くまでには時間差があります。横堀先生の説明によると、救急搬送者数は週1回の速報、死亡者数を示す人口動態統計は数カ月後、日本救急医学会が実施する重症患者の調査期間は半年ほど、入院患者数を示すデータにいたっては2年以上かかることもあるといいます。
一方で、熱中症警戒アラートや特別警戒アラートはリアルタイムに発表されます。しかし、アラートが出たあとに実際にどの場所でどれだけの健康被害が生じたのかは、時間がたたないと分からないのが実情だといいます。「軽症の段階でどんな人が、どんな状況で発症しているのか」がつかみにくいという点も、予防を難しくしている要因だといいます。

