iPS細胞を用いた再生医療とは?

再生医療は、身体がもともと持っている再生力を利用することで、障害を受けたり、欠損したりした臓器や組織の機能回復を目的とする医療のことです。再生医療には、体外で増やした細胞を患者さんに移植し、組織や臓器の機能回復を目指す細胞移植治療があります。この細胞移植に用いる細胞として、自己増殖能力とさまざまな細胞に分化、つまり神経、筋肉、皮膚、血液などの固有の役割を持つ細胞へと変化していく能力を併せ持つ幹細胞があります。iPS細胞は神経や筋肉、血液などさまざまな細胞へと変化する能力を持っており、再生医療への応用が期待されています。
iPS細胞が実用化されるとどんなことができる?

iPS細胞は、細胞移植治療の分野だけでなく、創薬分野などさまざまな領域での活用が期待されています。
免疫拒絶を回避した細胞移植治療
iPS細胞は、患者さん自身のさまざまな細胞に3〜4つの遺伝子を導入する方法で作成することができます。患者さん自身の細胞から作製できるため、免疫拒絶を避けた自家細胞移植を行いやすいです。
新しい薬を開発するときの副作用の予測
iPS細胞からはさまざまな臓器の細胞を作りだすことが可能です。新薬の開発の際には、ヒトに対する作用と副作用を臨床試験で確認する必要があります。iPS細胞からつくりだされたヒトの細胞を用いることで、臨床試験の前にある程度の副作用を予測することができるため、より安全な新薬開発が可能になります。
疾患モデル細胞の作製
iPS細胞株を作る際には受精卵を使用しません。そのため、倫理的なハードルがES細胞に比べ低いという利点があります。遺伝子異常が関係する病気の患者さんから採取した体細胞をもとに、iPS細胞を作製することで、病気の仕組みを研究するための疾患モデル細胞をよりスムーズに作ることができると予想されています。
特定の病気の治療薬開発
疾患モデル細胞を作製することで、特定の病気の治療薬の開発に役立てられる可能性があります。例えば、アルツハイマー病やパーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、筋ジストロフィー、進行性骨化性線維異形成症(FOP)などの病気の治療薬開発への応用が期待されています。実際にFOPでは、患者さん由来のiPS細胞を用いて有効な薬剤を探索する研究が進められ、その成果をもとにシロリムスを用いた医師主導治験も実施されています。
人工血液の作成と安定供給
手術の際などに必要な人工血液の作製と安定供給にも、iPS細胞が役立つことが期待されています。例えば、近年ではヒトのiPS細胞から自己複製可能な巨核球(きょかくきゅう)を誘導し、大量に血小板を生産する方法が確立されたと報告されています。
このように、iPS細胞は今後の血液の安定供給にも役立つ可能性があります。

