「iPS細胞」とはどんな細胞?ES細胞との違いや課題点も医師が徹底解説!

「iPS細胞」とはどんな細胞?ES細胞との違いや課題点も医師が徹底解説!

iPS細胞実用化に向けて課題となっていること

iPS細胞実用化に向けて課題となっていること

iPS細胞は受精卵を使用することなく、オーダーメイドの細胞移植治療を提供できる可能性があるという利点があります。一方で、実用化に向けては以下のような課題もあります。

腫瘍(がん)形成の懸念

iPS細胞の作製時に導入した遺伝子が再び活性化することや、細胞のDNAに変異が生じることなどが、腫瘍形成につながる可能性があると考えられています。現在、そうした原因への対応も含め、より安全なiPS細胞の作製方法の研究が進められています。

免疫反応が起こりやすい可能性

動物実験レベルで、iPS細胞を移植したところES細胞よりも免疫反応が起こりやすいのではという結果が得られたものがあります。なお、免疫反応とはウイルスや細菌などの異物が体内に侵入した際、それを「自分(自己)」と「自分ではないもの(非自己)」に見分け、異物を排除して体を守る生体防御の仕組みです。

この点に関しても、免疫反応に関わる抗原を適合させる、ゲノム編集技術を応用するなど、免疫反応を抑えるための研究が進められている段階です。

作成コストと時間

iPS細胞の課題として、作成にかかるコストと時間も挙げられます。

iPS細胞を生成するためのCell Processing Center(細胞培養加工施設)の維持費は年間数千万円を要する場合もあります。加えて、患者さん本人のiPS細胞はES細胞と異なり、毎回作成する費用と時間を要します。

これらへの対応として、iPS細胞バンクの準備などが進められています。

どんな病気の治療にiPS細胞は期待されている?

どんな病気の治療にiPS細胞は期待されている?

iPS細胞は、以下のような病気の治療に対してその効果が期待されています。

加齢黄斑変性

加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)は、特に高齢者の失明原因として重要な疾患です。加齢黄斑変性には、正常ではみられない血管である新生血管が生え、出血を起こすタイプのものがあります。これは滲出型(しんしゅつがた)と呼ばれます。このタイプに対しては、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)阻害薬の眼内注射や、光線力学的療法などが治療法となります。

近年、自分のiPS細胞を用いた網膜色素上皮細胞のシートを準備し、この新生血管を取り除いたあとに移植するという臨床研究が行われ、安全に実行できるのではと示されました。

パーキンソン病

パーキンソン病は、震えや動作がゆっくりになる、筋肉が強張る、転びやすくなることなどが主な症状となる病気です。脳の黒質という部分のドパミン神経細胞が少なくなることが原因と考えられています。

治療としては、ドパミンを薬物で補うなどの方法があります。加えて、再生医療用のiPS細胞ストックから作ったドパミン産生神経細胞を患者さんに移植するという方法が近年開発されました。さらに、2026年には日本でも非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞「アムシェプリ®️」の条件及び期限付きの製造販売承認を取得しました。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉を動かす指令を出し、実際に筋肉を動かすための神経である運動ニューロンの機能が損なわれる病気です。はっきりとした原因はまだわかっていません。治療法としては、病気の進行を遅らせる作用のある薬物を使う方法や、ALSによるさまざまな症状を和らげる対症療法があります。

現在は、患者さん自身の細胞から作製したiPS細胞を活用し、新しい治療薬の実用化を目指した治験が行われています。

家族性アルツハイマー病

アルツハイマー病は、認知症の原因の多くを占める病気です。脳にアミロイドβと呼ばれる異常なたんぱく質がたまり、神経細胞が死んでしまうことが原因と考えられています。

アルツハイマー病の一部に、特定の遺伝子が原因となる家族性アルツハイマー病があります。家族性アルツハイマー病は、その他のアルツハイマー病よりも若い時期から症状が現れることが多いとされています。

現在、患者さんの細胞によって作られたiPS細胞由来の細胞を用いた創薬治験が行われています。

慢性虚血性心不全

心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患が原因となり、だんだんと心臓の機能が失われていく状態を慢性虚血性心不全と呼びます。

薬物治療やカテーテル治療などが行われますが、こうした標準治療でも十分な治療効果が得られない方に対しても再生医療の応用が進められています。

最近では、iPS細胞由来心筋細胞シートを心臓の表面に貼り付ける治療法が開発され、条件と期限付きで承認を受けています。

進行性骨化性線維異形成症(FOP)

進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、筋肉や腱などの軟部組織が徐々に硬い骨に変わってしまう(異所性骨化)極めてまれな遺伝性疾患です。日本では国の指定難病に認定されており、現時点では根治的な治療法はありません。

近年、患者さんから作製したiPS細胞を使った研究が行われ、シロリムスという薬に治療効果が期待できるのではと報告されました。現在、医師主導の治験が行われています。

配信元: Medical DOC

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