夏と聞いて何を思い浮かべる?若冲、ミュシャらが選んだ夏のモチーフたち

『四季-夏』(ミュシャ)

アルフォンス・ミュシャといえば、新しい芸術を意味する国際美術運動「アール・ヌーヴォー」を代表する画家です。型にはまらない芸術性でポスターや装飾パネルなどの作品を手がけました。

『四季-夏』(アルフォンス・ミュシャ)『四季-夏』(ミュシャ), Public domain.

1896年に制作された連作『四季』は、その代表作の一つです。それぞれの季節を一人の女性に重ねて表現しており、自然と人物が美しく調和しています。

『夏』で描かれているのは女性が池のほとりに腰を下ろし、素足を水に浸して涼を楽しむ姿です。もの憂げな表情とゆったりとしたポーズには、夏特有のけだるさや情熱的な空気が漂っています。

『四季』にはどの作品にも女性と植物が描かれていますが、細かな違いにも注目です。例えば髪の色は『春』では明るい金色、『夏』では落ち着いた褐色に描き分けられ、それぞれの季節を象徴する花々が髪飾りとして添えられています。

『四季-春』(アルフォンス・ミュシャ)『四季-春』(ミュシャ), Public domain.

また『夏』には、ミュシャの故郷・チェコを象徴する花であるヒナゲシも描かれており、季節感だけでなく自身の母国への思いもさりげなく込められています。

ヒナゲシの花ヒナゲシの花, Public domain.

夏を描く作品というと、海や青空など風景を思い浮かべることが多いかもしれません。しかしミュシャは、一人の女性のしぐさや表情を通して、夏という季節が持つ美しさや空気感を表現しました。

『三井好 都のにしき 土用干』(水野年方)

水野年方による『三井好 都のにしき 土用干』は夏ならではの風習を描いた作品です。明治時代に活躍した浮世絵師・水野年方は、斬新な構図と高い描写力で人気を集めた月岡芳年の門下生としても知られています。

『三井好 都のにしき 土用干』(水野年方)『三井好 都のにしき 土用干』(水野年方), Public domain.

タイトルにもある「土用干し」とは、夏の土用の時期に衣類や書物を陰干しし、風を通して虫やカビを防ぐ昔ながらの年中行事です。「虫干し」とも呼ばれ、かつては多くの家庭で行われていました。

本作は三井呉服店(現在の三越)の広告を兼ねて制作された美人画です。虫干しをする女性たちが身につけている着物はもちろん、室内に吊るされた色とりどりの着物も見どころ。全体が淡くやさしい色彩でまとめられており、静かな風が通り抜けるような心地よさが感じられます。

また、足元に目を向けると、和紙で遊ぶ一匹の猫も描かれています。忙しく働く女性たちとは対照的な無邪気な姿が、作品の可愛らしいアクセントになっています。

現代ではあまり見かけなくなった土用干しの風景ですが、本作を通して見てみると、明治時代の夏の暮らしが感じられるのではないでしょうか。

配信元: イロハニアート

提供元

プロフィール画像

イロハニアート

最近よく耳にするアート。「興味はあるけれど、難しそう」と何となく敬遠していませんか?イロハニアートは、アートをもっと自由に、たくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディアです。現代アートから古美術まで、アートのイロハが分かる、そんなメディアを目指して日々コンテンツを更新しています。