実は「掃除しなさい」はNGだった。教育評論家 親野智可等先生がすすめる、夏休みの「親子大そうじ」が子どもを伸ばす理由

人生の土台となる「非認知能力」の重要性とは

ーーそういった前提がある上でお聞きしたいのですが、そうじのお手伝いにはどんな教育的価値があるのでしょうか。

親野 まず、人間には「認知能力」と「非認知能力」というものがあります。最近は中学受験者数も増加していますし、「とにかく勉強させて成績を上げる」を第一に考える親御さんも多いかと思います。「認知能力」はそうした場面で重視される学力やIQなど、知的な情報処理を伴う能力です。

対する「非認知能力」は、知的な情報操作以外にかかわる能力のことですね。たとえば、自分が定めた目的のために、どうしたら達成できるか試行錯誤しながらやり遂げる能力「グリット」や、失敗したあとに自分を肯定しながら復活してがんばる能力「レジリエンス」などです。こういった、数値化できないけれどすごく大事な能力を、まとめて「非認知能力」と言います。

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親野 あるアメリカの研究によると、この「非認知能力」が学力の土台になるとわかっており、ひいては人生の土台だと言っても過言ではありません

ーーこうした「非認知能力」は、そうじのお手伝いによって身につくことが期待できるんですね。

親野 そうですね。ほかには、家族が「あなたがそうじしてくれたから、お風呂に気持ちよく入れたよ。ありがとう」など感謝してくれる。すると「自分はみんなの役に立てるんだ。成し遂げられるんだ」と自己効力感が高まります。

それに、手順を一度インプットしてから行動に移すための力、ワーキングメモリーが鍛えられます。そうやって五感と体を使うことで、「感覚統合」を促すという側面もありますね。

あとは責任感や自己管理力も高まります。「今日は面倒くさいな。休みたいな」と思っても「でも、きれいにしないとみんながお風呂に入れないしな」とやり遂げる力ですね。

ーー家族みんなの顔が思い浮かぶのは、責任感の表れですね。

親野 そして家族との共同作業によりコミュニケーション能力も高まります。

ーー生きていく上でとても大切な能力ばかりです。ぜひ子どもにやってほしいと思いますが、どのように促せばいいですか? 子どもの重い腰を上げさせるのが一番難しいと思うのですが……。

親野 やっぱり最初の投げかけ方が大事だと思います。「やりなさい!」だと、当然子どものモチベーションは上がらないですよね。

子どものやる気ってジェットコースターみたいなもので、最初に高い所に上げてそこから位置エネルギーを利用して突っ走られるようにすることが大事なんです。低い位置からスタートするとすぐ止まってしまいます。

ーーなるほど。日常的に、お手伝いを促す前にやる気を高めておくんですね。

親野 そうですね。たとえば子どもがなにかをやってくれたときに「ありがとう! 助かったよ!」とものすごく感謝したり、勉強をがんばっているならそのつどそれを褒めたりすると、やる気が高まります。

それが下手な親御さんになると、「いつもお父さんとお母さんがやってるんだから、夏休みくらいお手伝いしなさい!」。これでやる気が上がる子っていないと思うんですよ。

ーー位置エネルギーが低い場所から始まるから、まったく続かないんですね。

親野 そうなんですよ。しつけだからと上から目線で指示や命令を出して、やらないと罰を与える。それではムリです。褒めることで、いい雰囲気を作っておくことが大事ですね。

夏の大そうじを習慣化する秘訣

ーー事前にやる気を高めることのほかに、どんな手立てがありますか?

親野 ゲーム性を取り入れるのも効果的ですよね。床掃除用のフローリングワイパーを持たせて、「どっちが多くゴミを取れるか競争だ!」という方法もありますね。

自由研究の題材にするのもおもしろいと思います。リビング、玄関、和室など、それぞれをフローリングワイパーでそうじして、ついたゴミを簡易顕微鏡で覗いてみるんです。そうすると、一種類だけではないさまざまなゴミがついていることや、部屋によってゴミの種類が違うのがわかって、十分に研究になり得るんです。

ーーそうじだけではなく、ほかの目的をプラスするのはいいですね!

親野 「こんなにたくさんゴミがある場所に住むのはうれしくないよね。どうしたらきれいになるか、一緒に考えよう」とそうじのお手伝いに結びつけていく、という側面もあります。

ほかに、節目に家族みんなで抱負を言い合う機会を設けるのもいいですよね。たとえばお父さんが、「今年は必ずゴミ出しをする」と抱負を立てると、「お父さんも家族のためになにかやるなら、自分もやってみよう」という気になるかもしれません。

ーーとなると、節目として夏休みは絶好の機会ですね。今回の夏の大そうじがきっかけで、そうじのお手伝いが習慣化するのが理想的だなと思いますが、習慣化に報酬は効果的ですか?

親野 基本的にはおすすめしません。私の教え子で、運動会のときに「クラスの子を応援しよう」と声をかけたら、「応援したらいくらくれる?」と返す子がいたんです。それは何に対してもで、友だちにも言っていたようです。のちに「勉強をがんばったら100円、テスト90点以上で100円」ということをやっているご家庭だとわかりました。

お手伝いというのはそもそも、家族が一緒に暮らしているなかで「自分もなにかしらみんなの役に立ちたい」からやるものですよね。そうなると報酬はちょっと違うのかなと思います。

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ーーでは、どうすれば習慣化につながりますか?

親野 当たり前になるまでなかなか難しいんですが、「何をやらせるか」というのはすごく大事ですね。子どもによって、生まれつきの資質や能力って全然違うんですよ。はっきり言うと、お手伝いに向いている子と向いていない子がいるわけです。手作業が好きな子はどんなそうじも好きだけど、手作業が好きじゃない子もいるわけです。

ーー大人でも、家事の得手不得手はあります。子どもならより顕著に表れそうです。

親野 料理が好きな子、計算が好きな子、ボールを使って走り回りたい子、ダンスが好きな子、本を読んで物語に没頭したい子、人形遊びが好きな子……それぞれ、生まれ持った資質なんです。

そんなふうに生まれつきのものがあるから、親が期待するようなお手伝いには向かない子もいる。そういう子には、単純な作業を振る。「玄関の靴を揃える」とか、複雑なことを要求しない方がいいと思います。

配信元: マイナビ子育て

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