肝炎は血液検査の数値でわかる?メディカルドック監修医が、B型・C型などの種類の違いと肝炎ウイルス検査、費用について詳しく解説します。
この記事のまとめ
・肝炎の診断は基本的にAST・ALTの上昇と症状などで判断し、基準値は共に30U/L以下で、50U/Lを超える場合は早めの精密検査が必要である。
・B型肝炎はHBs抗原・HBs抗体・HBc抗体、C型肝炎はHCV抗体やHCV-RNA量を調べることで、現感染・既感染・未感染などの状態を判別する。
・ウイルス性肝炎検査は自治体や会社の検診で0〜5,000円程度、内科での保険診療では1,500円程度で受けられ、治療が必要な場合は自治体への肝炎助成申請により自己負担額を月1〜2万円程度に抑えられる。
・肝炎の予防には、B型肝炎ワクチンの接種、剃刀の共用を避ける、コンドームの使用、過度なアルコール摂取を避けることなどが効果的である。
・近年増えている脂肪肝による脂肪肝炎(MASH)は自覚症状が乏しいまま進行することが多いため、バランスの良い食事や適度な運動で予防することが重要である。

監修医師:
岡本 彩那(淀川キリスト教病院)
兵庫医科大学医学部医学科卒業後、沖縄県浦添総合病院にて2年間研修 / 兵庫医科大学救命センターで3年半三次救命に従事、近大病院消化器内科にて勤務 /その後、現在は淀川キリスト教病院消化器内科に勤務 / 専門は消化器内科胆膵分野
肝炎とは?

急性肝炎
急性肝炎とは、肝臓の細胞が急速に壊されて肝機能障害を来す病気です。肝炎の症状としては初期段階では発熱や頭痛など風邪のような症状が出てきます。このままよくなってくることも多く、肝炎になっていると気が付かずに治る人も多いでしょう。ただし、その中には全身のだるさ(倦怠感)、黄疸などの症状が出てくる人もいます。急性肝炎の原因としては肝炎ウイルス、特にA、B、E型肝炎ウイルスの感染が多いとされています。その他、EBウイルスなど他のウイルス感染、アルコール、自己免疫や薬剤も原因となります。肝炎の治療としては基本的に安静、食事療法が中心となりますが、重症の場合は入院加療が必要となります。また、肝炎の重症度、原因によっては一刻も早くステロイドなどで治療を行わないと命にかかわることもあります。急性肝炎の数%は数日で肝臓の機能が急速に低下、意識障害、脳浮腫を起こし命に関わる劇症肝炎となる場合もあります。そのため、肝炎の状態について適宜血液検査を行いながら見ていくことが必要です。特に肝酵素(AST、ALT)が1000を超えている、もしくはそれに近い状態である、PTがかなり低下しているなどであれば、急速に肝細胞が破壊されている状態であり、特に慎重に見ていくことが重要です。
慢性肝炎
慢性肝炎とは、肝臓に慢性的な炎症が起こっている状態です。診断としては6か月以上肝機能障害が続く状態を言います。原因としてはB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコールや自己免疫によるもの、脂肪肝があげられます。先に述べた急性肝炎の原因がB型肝炎ウイルスであった場合などは、急性肝炎のあとに慢性肝炎に移行することがあります。慢性肝炎の場合、自覚症状を認めないことが多く、検診などをきっかけに血液検査を行ってたまたま見つかるなども多い病気です。自覚症状に乏しいため、病気にかかっていることに気づかずすごし、気づいたときには病気がかなり進行している、肝硬変などに進んでいるなどという状況もあり得ます。肝機能障害を指摘された場合は一度検査を行い、肝臓の状況を確認、状況に応じて治療を行うことが重要です。
肝炎が慢性化して進行する原因とリスク
肝臓に慢性的に炎症が起きている状態を慢性肝炎といいますが、この慢性肝炎は自覚症状が出ないことも多い病気です。そのため、慢性肝炎になっているとわからず過ごしてしまうことも多いでしょう。また、肝臓は血液検査の数値で異常があったとしても、自覚症状は出にくい臓器です。そのため、検診などで引っかかっても放置してしまうことも多いでしょう。他、原因がアルコールであった場合、治療はアルコールを断つこととなりますが、アルコールに依存している人はなかなかやめることが難しいというケースもあります。慢性肝炎は先に述べた通り肝臓に慢性的に炎症が起きているため、細胞が破壊、再生を繰り返しています。これをずっと続けることによって肝臓自体が徐々に硬くなり(線維化)、肝硬変に移行してしまいます。肝硬変になった場合、肝臓は十分に機能しなくなります。一方で肝臓の役割は解毒、タンパク質の合成、消化液(胆汁)の産生、エネルギーの貯蔵などかなり重要なものが多数であり、肝臓がなくなった場合、人は生きていくことができません。肝硬変となってしまった場合はこれらの機能が失われるということになるため、命にかかわる事態となってきます。また一方で、慢性肝炎、肝硬変となった場合、肝臓の中に肝細胞癌が発生することもあります。この肝細胞癌も症状がなかなか出にくく、気づいたときにはかなりの大きさになっていた、複数の肝細胞癌となっていた、転移していたなどでもおかしくありません。肝炎が慢性化し進行した場合、これらのリスクが生じることとなります。そのため、肝機能異常を指摘された場合は検査を行い、早めに治療を行っていくことが重要です。
肝炎にはどんな種類がある?

肝炎を起こす原因はさまざまであり、その原因によっては経過、症状、治療などが異なります。ここでは主な種類とその経過などを説明します。
B型肝炎の特徴と症状
B型肝炎ウイルスは急性肝炎、慢性肝炎を引き起こすウイルスです。B型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。そのため、感染の原因としては何らかの出血リスクのある処置や輸血などと言われています。少し前は入れ墨や注射器の回し打ちなどが原因とされていましたが、現在感染対策がしっかりなされているため激減しています。また、輸血もかなりの精度での検査を行っているため、感染リスクは0にはならないもののかなり低いとされています。現在の主な原因としては母子感染(母から子への感染)、性行為による感染が問題となっており、母子感染では出産前後のワクチン投与など対策がなされています。このB型肝炎ウイルスに感染した場合の経過は様々です。まず、このウイルスに感染した場合、自覚症状が何もない、もしくは風邪のような症状を起こして治った(急性肝炎)という人もいるでしょう。急性肝炎になった場合、症状が増悪すると黄疸や倦怠感などの症状が出てくることもあります。また、この一部には気づかないうちに慢性肝炎に移行していたり、逆に数日間で急速に肝臓の細胞が破壊されてしまい、肝臓の機能が急激に落ちて命にかかわる劇症肝炎となることがあります。この劇症肝炎の原因となるのもB型肝炎ウイルスが最も多いです。自身の免疫がウイルスを完全に抑え込んでしまい、肝機能障害も起こしていない場合、既感染の状態となります。その他、このウイルスに感染して体内にウイルスがいるにもかかわらず何の症状も起こさないという人がいます。これはキャリアといい、特に出生時に母から感染する場合(母子感染)はその90%がなってしまうと言われています。既感染、キャリアの場合は特に治療を行わないで様子を見ていきますが、何らかの病気で免疫を抑える薬(免疫抑制剤やステロイドなど)を投与する場合、体内のウイルスが爆発的に増えてしまい命に係わることがあります(再活性化、de novo 肝炎)。再活性化を起こしてしまった場合、救命率はかなり低く、まず助からないと考えたほうがよいでしょう。キャリアもしくはB型肝炎の既感染(以前にかかっていた)の場合はその治療中、治療後にウイルスの量を定期的に測定し、異常があった場合はすぐに薬を投与するなどの対策を行うことがかなり重要となります。
C型肝炎の特徴と症状
C型肝炎ウイルスは慢性肝炎を起こすウイルスです。その感染経路は血液を介しての感染が主であり、手術や輸血などが原因となり得ます。一昔前は注射器の回し打ち、入れ墨が原因として上がってはいましたが、今は手術と同様に感染対策がなされているため、その数は減ってきています。C型肝炎ウイルスは感染を起こしても自覚症状がなく気づかなかったという人も多いウイルスのため、どのタイミングでどれが原因で、と同定することは困難であるケースも多いでしょう。C型肝炎ウイルスは感染するとその60〜80%程度が持続感染となり、慢性肝炎から肝硬変、肝細胞癌と病状が進むリスクがあります。そのため、C型肝炎ウイルスに感染した場合とわかった場合は、B型肝炎ウイルスとは異なり原則として全例が治療の適応となります。
他のウイルス性の肝炎の特徴と症状
B型肝炎、C型肝炎以外のウイルス性肝炎の原因として挙げられるのはまずA、E型肝炎ウイルスでしょう。A、E型肝炎はウイルスに汚染された食物や水を摂取する、ウイルスの付着した手指を介してなどの経路で感染します。A型はカキなどの二枚貝、E型はイノシシなどが原因として挙げられます。これらのウイルスは急性肝炎を引き起こすウイルスとされています。ただし、B型肝炎ウイルスと異なり、慢性肝炎の原因とはなり得ません。その他ウイルスとしてはEBウイルスやサイトメガロウイルスなどが原因で肝炎を引き起こすこともあります。
ウイルス性以外の肝炎の特徴と症状
ウイルス以外に肝炎を起こす原因は複数あります。ここではそのうち主なものを挙げて説明していきます。アルコール性肝炎はアルコールを多量に飲む、飲み続けるとアルコール性肝炎を発症します。アルコール性肝炎の場合、治療としては禁酒しかありません。しかしながらアルコール性肝炎を発症する人は常習的に多量の飲酒をしている人が多く、治療にはそのお酒を完全に立つことが必要となるため強い意志が必要となります。このアルコール性肝炎を放置して飲酒を続けた場合、肝硬変に進行してしまい、ここまでくると治ることはありません。肝機能障害、肝炎の時点で禁酒を行うことがとても重要なのです。薬剤性肝炎は新しく薬を始めるなどした場合、その薬の影響で肝炎、肝機能障害を起こすことがあります。この場合は薬が原因であるため、薬をやめてしまえば自然とよくなるケースが多いでしょう。ただし、またその薬を飲んでしまうと同じ事を繰り返してしてしまうため、別の代用できる薬があればそちらに切り替えるなどという対策が必要となります。処方した医師と相談しましょう。また、病院で処方された薬以外にも薬局で買った薬やサプリメントが原因となっている場合もあります。自己免疫性肝炎(AIH)はその他の理由としては自己免疫性肝炎などがあげられます。これは自分の免疫で自分の肝臓を攻撃してしまうことによる病気です。自己免疫性肝炎は診断されたときその半数以上に自覚症状はなく、ほかの理由で血液検査を行った、検診で採血を行ったなどで異常がわかり、精密検査を行うことで発見されます。この病気では肝臓を攻撃するタイプの特殊な抗体が体の中で作り出されているため、それらの抗体がないかを調べます。検査で陽性となった場合は肝臓を直接針で組織を採取すること(肝生検)で診断していきます。確定診断がついた後はその時の状態によって内服加療を行っていきます。

