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【対談連載】OSK日本歌劇団 劇団員 登堂結斗

【対談連載】OSK日本歌劇団 劇団員 登堂結斗

【大阪・船場発】終始柔らかな笑顔で取材対応してくれていた登堂さんだが、立ち姿の撮影に入り「何かポーズを」とカメラマンが声をかけた途端、一瞬にしてまとう空気感が変化した。表情はもちろんだが、目を見張ったのはその指先だ。開いた角度、置かれた位置、隙のない指先はスターとしての登堂さんを完璧に表現していた。指はこんなにも雄弁だったのかと驚く。舞台上の一瞬のために幾重にも思いを積み重ね、試行錯誤を繰り返して技術を磨いてきた日々をそこに見た。
(本紙主幹・奥田芳恵)

●台本にはない余白を思考し 目線一つにこだわりを持つ


奥田 前回、先生からのダメ出しを色分けするために、何色ものマーカーをお持ちということでしたが、ダメ出しはいつまで続くんですか。
登堂 ゲネプロと呼ばれる本番直前の最終リハーサルがあるのですが、そこでも結構ダメ出しされます。ただ、本番が始まったら、お客様とコミュニケーションしながら、自分たちでつくり上げるようにと言われています。
奥田 お客様とはどうやってコミュニケーションを取るのでしょうか。
登堂 直接言葉を交わすことはなくても、お客様からは多くのことを感じます。見ておられる様子や会場の雰囲気は、日によって全く違いますから。
奥田 舞台とお客様が一体となって、その日その時の世界観を築かれていく……。
登堂 お客様は生活の中の大切な時間とチケット代を費やして、舞台を見てくださっています。お客様と共に舞台をつくり上げ、何か一つでも「よかった」と思えるものを持ち帰っていただけるようにと演じています。
奥田 お稽古で積み上げたものが、本番で変わることはありますか。
登堂 結構あります(笑)。お客様からの反応や、舞台でライトを浴びた時の感覚で、見せ方を変えることはあります。特にお芝居は変わりやすいですね。
奥田 ということは、毎回違ってくる。
登堂 そうですね。ただ、先生からは「感情に流されすぎないように」と釘を刺されています。私のクセなのか、スイッチが入りすぎると舞台の決まり事から離れて、自由になり過ぎるというか(苦笑)。そうなると相手にも迷惑をかけるし、本来の世界観とも違ってしまうので。
奥田 逆に相手や周りの反応が変わると、登堂さんの演じ方も変わるのでしょうか。
登堂 はい。要するにキャッチボールなので、相手がそうなら自分はこうしてみようと。でもその場でいちいち考えるのではなく、積み上げてきたキャラクターや演じている役の個性を考えて、反射的に応えていくという感じでしょうか。
奥田 そのためには、自分の中にたくさんの引き出しがないとできませんよね。
登堂 そうですね。先輩からも「普段からいろいろなことにアンテナを張って、引き出しをいっぱいにしておきなさい」と言われています。
奥田 今度は“役”についてうかがいます。役を演じながら、登堂さんらしさを出すにはどうされるのでしょう。
登堂 自分との共通点を探したりします。どんなふうに考えるのか、どんなクセを持っているのか、自分と重なる部分はあるのか。悪役の場合なら「生来は優しさを持っていたのか、持っていたなら、いつどうして捨ててしまったのか」など、推測したり分析したり……。
奥田 それは台本にはない余白の部分になると思うんですが、そんなところまで思いを巡らせるんですね。
登堂 考えるのはいいんですが、舞台に立ったばかりの頃は「自分はこう演じているので、こう見てほしい」と思いがちだったんです。でも今は、自分から押しつけるのではなく、お客様一人一人が感じてくださる感性を大事にしたいと考えています。
奥田 お客様の感じ方を大切にすると……。
登堂 例えばお芝居の途中で、相手役と向き合っているとき、ふっと別の方向を見るだけでも、お客様は「今何を見たのだろう」と想像されると思うんです。目線一つでも表現はできる。そこにこだわって、お客様がいろいろなことを感じて楽しんでいただけるといいなと思います。

●「もっと、もっと」が尽きない 舞台という仕事場


奥田 ご自身の課題についてはどうお考えでしょうか。
登堂 課題は山積みです(笑)。身体が資本なのですが、過去に左右のアキレス腱を3度ほど断裂しているため、足の可動域が狭かったり、左右で筋量に差があったりするんです。でもそれは何かができない理由にはなりませんから。
奥田 歌に踊りに、舞台は体力を使いますよね。
登堂 レビューショーとミュージカルは使う部分が違うので、疲労感が違います。レビューショーは歌いながら踊るので、体力や持続力が必須です。一方、ミュージカルは、歌と踊りに加えて演技もあるため、キャラクターのつくり込みや相手役とのコミュニケーションも入れ込まないといけないので、よりキャッチボールが必要です。
奥田 お話をうかがっていると、登堂さんたちのお仕事に限りがないことが分かってきました。
登堂 「もっと、もっと」が尽きません(笑)。
奥田 それが大変さでもあり、面白さでもあるんでしょうね。ところで、数年前NHKのドラマで貴劇団がモデルとして取り上げられて以来、チケットの入手が難しいとか。
登堂 そうなんです。ありがたいことに、知名度が格段に上がったと感じます。これまでにないお客様がいらしてくださるようになりました。
奥田 それはどこで感じるのですか。
登堂 舞台に対する拍手のタイミングが、いつものお客様と少し違ったり……。客席から「TVで見た人がいる!」という声が聞こえたこともあります。ドラマの影響はすごいです。
奥田 今のお仕事を満喫されていますが、もし歌劇の道に進んでいなかったら、どうされていましたか。
登堂 小さい頃の夢は小学校の先生でしたね。全教科が担当できて、1年なり2年なりの時間を、クラスの子たちと一緒に過ごせるというのは魅力的だなと。
奥田 ちなみに、大学は何を専攻されていたのでしょう。
登堂 国際文化学科でした。いろいろな国の方とつながりが持てたら楽しいなと思って。
奥田 登堂さんは人と関わることがお好きなんですね。
登堂 好きです。でも実は人見知りなんです(笑)。
奥田 意外です。緊張されるんですか。
登堂 します! 今でもマイクを持つと手が震えていることもあります。
奥田 どうやって克服を。
登堂 舞台の場合は、お客様の表情や雰囲気からコミュニケーションができていると感じると「大丈夫だ」と思えるようになりました。
奥田 お客様からパワーをいただいている。
登堂 そうですね。すごく助けられています。お客様にもそれぞれの事情や人生があると考えると、自分の緊張なんてちっぽけだなと。
奥田 最後にうかがいます。どんな舞台人になりたいですか。
登堂 (少し考えて)与えられたものに全力で取り組む。その結果、同じ役柄でも毎回違う。見るたびに発見があって、毎回が新鮮だと思っていただける舞台人になりたいです。お客様を飽きさせない、「この人をずっと見ていたい」と思っていただける舞台人でありたいです。
奥田 すばらしいです。これからの登堂さんの舞台がますます楽しみになりました。今日はいろいろなお話をありがとうございました。
配信元: BCN+R

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