「医食同源」という言葉がある。日常の食生活に気を配ることが、一番の病気予防になるということだ。ふだん何気なく食べている食材にはさまざまな作用があり、私たちの健康を支えてくれている。それはまさに薬のような存在でもあるのだ――。
薬剤師で薬学博士でもある船山信次氏の書籍『日本人はいかにして毒と薬を食べてきたのか?』より一部を抜粋・再構成し、日常の食材から摂取できる栄養素について説明する。
野菜や柑橘類とビタミンC
飲食物の中にはそれらを摂取することによって体調を整えることが出来たり、あるいは、薬と呼ばれるものと共通のものであったりするものも存在する。
たとえば、あるビタミンが不足している場合には、そのビタミンを豊富に含む飲食物はまさに薬となるし、野菜や香辛料の中には薬と共通のものもあった。
生姜と書いてショウガと読めば香味野菜であるが、ショウキョウと読めば全く同じものが漢方薬に配合される生薬の名前となるようなものもある。
水溶性のビタミンの代表的なもののひとつにビタミンC(アスコルビン酸)があり、果物や新鮮な野菜などに含まれる。
実は、ネズミはビタミンCを体内で合成できるが、ヒトはビタミンCを体内で合成できない。そこで、ヒトが新鮮な野菜などの摂取不足になるとビタミンC欠乏症を引き起こし、重篤となると生命に関わる。すなわち、これが壊血病として知られている疾病の発現である。
かつて壊血病に陥ると、あざが出来たり、歯肉の出血やそれにともなう歯の脱落、毛髪や皮膚の乾燥、貧血が起きたり、骨組織の形成不全、骨病変などが起こり、ついには死に至ることになった。
ビタミンCの不足によって起こる壊血病に対しては、たとえばビタミンCを多く含むレモンなどはまさにその予防の「特効薬」となる。
現在、壊血病はビタミンCの欠乏症であることがわかり、この疾病を免れるためにはビタミンCの摂取が有効であることがわかっている。
ビタミンCは、トマトやジャガイモ、イチゴ、ピーマンなどに豊富に含まれるので、これらの食べ物の摂取や、ビタミンCのサプリメントの服用も壊血病の予防や治療に大変に有効な手段となる。
干しシイタケとビタミンD
一方、油溶性のビタミンであるビタミンDの不足によって発病する、くる病・骨軟化症と言われる疾病がある。
くる病・骨軟化症の原因としては、(1)体内のビタミンDが不足している、(2)ビタミンDが体の中で働かない、そして(3)腎臓でリンの再吸収がうまくいかない、という3つの原因があるとされるが、ここでは食べ物からのビタミンD摂取不足に絞ってお話しする。
食べ物でビタミンDを多く含むものとして干しシイタケが知られている。
面白いことに、ビタミンDは生のシイタケには含まれず、生シイタケを天日で干すことにより紫外線の働きにより、そこに含まれるビタミンD前駆物質に変化が起き、ビタミンDが合成されるのである。現在ではこの紫外線によるビタミンD生成の機構も完全に解明されている。
ビタミンDの他、油溶性のビタミンとしては、ビタミンAやE、Kなどもあり、それぞれ、種々の食品に含まれていて、重要な役割を果たしている。
このように、各種のビタミンは重要であるものの、現代社会においては、基本的に各種の食材に含まれているため、片寄った食事を避け、バランスの取れた食事をしている限り、ビタミン不足による疾病発現の恐れはまず起こりえないと思う。
これらのビタミンのことを考えると、まさに「薬食同源」であることがよく理解される。

