第30話「ふたりは旅行中」(監督:杉原輝昭、脚本:香村純子)
『ルパパト』の物語にサビがあるとすれば、それは間違いなくダブルレッドの関係性。飄々としながらも影のあるズルい青年、夜野魁利(ルパンレッド)。熱血ド根性ながら柔軟さも持ち合わせた現代的刑事の男、朝加圭一郎(パトレン1号)。この2人の掛け合い、距離感、相互補完、そして正体バレに至るドラマこそが、見応えばっちり脂ぷるんぷるんであります。
極秘任務のために温泉街へ赴く圭一郎と、それを怪しみつけてきた魁利は、期せずして共に観光することに……というのが第30話のあらすじ。後半のレッド同士のアクション、ぎりぎりの局面での警察官の判断、合成を意欲的に用いた新鮮な絵のロボ戦など、見所が多い。だが、特筆すべきはやはり髪飾りのくだり。
髪飾りを無くしてしまった迷子の女の子と出会った2人。「昨日買ってもらったばかりなのに」と涙を流す女の子に、同じ品を購入してプレゼントしようとする魁利。しかしそこに現れたのは、汗をかき、走り回り、無くした本物の髪飾りを「君の宝物を見つけたぞ!」と全力疾走で届ける圭一郎だった。その姿に、魁利は在りし日の兄の姿を重ね……。
これ、非常に印象的なエピソードで。昨日買ってもらったばかり、つまり同じ温泉街で売っていると見込んで露店をまわり、効率よく代替品を手に入れる魁利。一方で、地面に膝をつきながら懸命に髪飾りを探し、無くしたそれこそが替えの効かない宝物だと信じている圭一郎。2人とも決して間違っていない。女の子のためにしたことは同じでも、アプローチの差がどこまでも残酷に2人を分かつ。これがそのまま、快盗という非合法な手段を選んだルパンレンジャーと、市民の笑顔のために正道を歩むパトレンジャーの、見事なまでの対比にも繋がってくるのです。香村脚本、なんておそろしい子……!
スーパー戦隊とは、これまた「若者の群像劇の歴史」とも言えるでしょう。シリーズが昭和から平成に移り変わり、軍隊や組織に属するのではなく、それぞれが異なる人生を持つ多様なメンバー構成も増えていきました。生きてきた価値観、将来への想い、どこにこだわりなにを捨てるか。考え方が違うからこそ、時にぶつかり、すれ違い、結束していく。まだ演技経験の少ない若い役者が多いからだろうか、剥き出しの感情のような、純な人間味が交錯する。スーパー戦隊に、そんな一幕を求めていた人も少なくないと思われます。
たかが髪飾り、されど髪飾り。『ルパパト』のサビは、実に鋭利に心をえぐるのです。
第42話「決戦の時」(監督:杉原輝昭、脚本:香村純子)
紆余曲折を経て、いつも対立し、時に共闘しながらも、遂にギャングラーの幹部であるデストラ・マッジョと対峙するダブル戦隊。
この第42話、本当に……本当に、思い入れがあります。あまりに好きすぎで、放送当時はこの回の特定のシーンを語りたいがためにブログをしたためました。TTFC(東映特撮ファンクラブ)の動画は常にスマホにダウンロードされており、気分が落ち込んだ時、テンションを上げたい時、涙を流したい時などにいつも再生してしまう。そんな、我が魂に刻まれた第42話です。私の棺桶には第42話の録画データを入れてくださいよろしくお願いします。
強敵を前に地面に這いつくばるしかない面々。「あいつは絶対諦めない!」「絶対あいつは立ち上がる!」。ダブルレッドが互いを睨みながら、ルパンレッドなら、パトレン1号なら、この絶体絶命のピンチをどう打破するか思考を巡らせる。約1年、出し抜き出し抜かれ、激しく信条をぶつけあった相手。決して肩を貸してはいけない、手を取ることすら許されない相手だからこそ、思考を辿ることができる。決意の後、快盗が体をはって囮となり、警察がその隙に敵のコレクション(能力発動の要)を奪取する。言葉を交わさずに役割を逆転させる、ルパンレッドとパトレン1号の絶対不和なコンビネーションが炸裂するのです。
「その体で無茶な真似を……。俺が動かなければ、今頃お前はバラバラになっていたぞ!」「そん時はそん時だ。でも、あんたなら意地でも金庫あけると思った。でしょ?」「……くっ、ズルい男だ」「ふっ、それが俺の売りなんで」
おいおいおいおいおいおいおいおい!!!!!!おいおいおいおい!!!ふぉ~~~~~~~~~!!!!!!!
スーパー戦隊は、あるいは「対立の歴史」。正義と悪が拳を交え、絶対的に分かり合えなかったり、時には呉越同舟したり。そして、1996年『超力戦隊オーレンジャー オーレVSカクレンジャー』を皮切りに、スーパー戦隊同士が戦い、やがて結束する物語は、シリーズのお約束となりました。2つの戦隊が、対立しながらも互いの価値観を認め合い、共に巨悪に立ち向かう。あくまで番外編として展開されてきた、通称「VSシリーズ」。それを本編内で1年をかけて展開する、これも『ルパパト』の大きな個性です。
以上、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』からのセレクションでした。いかがだったでしょうか。ええ、もちろん、今回も聞こえております。「どうしてあの回が入っていないんだ!」。分かります。よぉく、分かります。ぜひSNSで、あなたの好きな『ルパパト』、その熱量や悲鳴をお聞かせください!
ルパンレンジャーのテーマ曲とパトレンジャーのテーマ曲、その2つが「対位法」という作曲技法で調和した番組主題歌に、大いに衝撃を受けた2018年。戦隊ならではのコメディ、戦隊ならではの群像劇、そして、戦隊だからこその対立。異色作に見せかけてシリーズの王道をしっかり踏襲した『ルパパト』、これからも幾度となく再見することでしょう。
次回、【スーパー戦隊ファイナルウェーブ】は第3回で完結です。約束です、きっとまたお会いしましょう。

