映画化もされたNHK人気ドラマシリーズ『岸辺露伴は動かない』。その主演を務める高橋一生さん×渡辺一貴監督がタッグを組んだ新作映画『脛擦り(すねこすり)の森』が公開されます。
すねこすり、って……なんだか妖怪みたいな響き。そもそも『岸辺露伴は動かない』のおふたりによる映画なのですから、あの作品のように、ちょっぴり奇妙でゾクゾクするお話だったりして。
いてもたってもいられず、ひと足お先に試写で鑑賞させていただきました。
【あらすじ】
いつのまにやら深い森へと迷い込んでしまった男。足元に絡みつく草が、痛む足をいっそう重くするので、なかなか前に進めない───。
男がしばらく途方に暮れていると、どこからか女の美しい歌声が聴こえてきたではありませんか。声に導かれるように前に進んでいくと、やがて古めかしい神社へとたどり着きました。
神社には、白髪の老人と、老人の妻・さゆりが暮らしているようです。ふたりから手厚く看病を受けた男は、神社にしばらく滞在することに。時間が止まってしまったかのようなひとときを過ごすうちに、いつしか「帰らなければ」という気持ちも薄れていきます。
【静けさと余白が心地よい】
この映画は、とてもとても静かな作品です。
あまりに静かで自分自身までもが森のなかへと迷い込んでしまったかのよう。木々が揺れ草がこすれる音、風のささやき、森の呼吸までもが聞こえてきそうなほど、しんとしています。
物語のなかでは、森で迷った男が神社で暮らす様子が描かれます。しかし男も、神社に住む老人もその妻も、ほとんどなにも語らないのです。
なぜこんな場所に暮らしているのか。そもそもこの老人の妻は、孫娘くらい年が離れていそうだけれど、本当に妻なのか。なにもかもがわからない。けれど、わからないままでいいような気もする。
そんなふうに、思うようになっていくのです。静けさと余白が想像力を掻き立てて、同時に煙に巻いていく。まるでキツネにつままれたかのような感覚。それでも、みるみる癒やされていく不思議。

