ホルムズ海峡の封鎖で株価も金価格も落ち込んでいる。新NISAによって多くの国民が投資を開始した日本だが、こうした局面ではどんな金融商品を持つべきなのか。国際的投資家の木戸次郎氏は「この問いは単なる投資の話ではない。日本という国の構造そのものに直結する問題だ」と語る。
エネルギーそのものを戦場に引き上げる意思表示
イラン人の友人に聞くと、少なくとも現場感覚としては米国サイドとの交渉など一切行われていないという。表で語られる「水面下の交渉」という言葉とは裏腹に、現実はもっと直線的で、生々しい。
その一方で市場はどうか。イスラエル筋の情報やトランプ大統領の発言ひとつで、原油価格も株価も乱高下している。この振れ幅こそが、いまの市場の正体だ。
そしてそのボラティリティを利用して、一部のヘッジファンドが莫大な利益を上げているという構図は、皮肉としか言いようがない。
現実では人命とインフラが削られている一方で、市場ではその「揺れ」自体が収益機会になる。このねじれは、現代の金融の縮図でもある。
さらにイラン側は、電力施設への攻撃が行われた場合、即座にイスラエルの9カ所のエネルギー施設を攻撃する準備をしていたという。これは単なる報復ではない。エネルギーそのものを戦場に引き上げる意思表示だ。戦争はもはや軍事だけでは完結しない。エネルギー、物流、通貨、そのすべてが戦場になる。
この文脈で見ると、金価格の下落は極めて象徴的だ。本来、金は「生産できない資産」であり、有事に最も強いはずの存在だった。
しかし現実には、中東各国がオイルマネーの流入停止に直面し、保有する金を市場に放出している可能性がある。安全資産が資金繰りのために売られる。この現象は、流動性がすべてに優先するという、もう一つの現実を示している。
だからこそ、下げた局面で金を拾うという発想は合理性を持つ。ただしそれは「安全だから買う」のではない。「流動性で売られているから買う」という逆張りの発想だ。
イランはこれまで18年にわたり蓄積してきたミサイルを使い果たし、今後はより高度な攻撃へ移行するという。戦争は次のフェーズに移りつつある。ウクライナとロシアの戦争、そして今回の衝突を見れば明らかなように、現代の戦争に勝者はいない。
いま起きているのは単なる地政学リスクではない
民間人が命を落とし、インフラが破壊され、エネルギーが消費され、その結果として物価は上がり、経済は確実に傷つく。構造として、全員が削られていく。
市場はその上で動く。だから価格だけを見ていては本質を見誤る。いま起きているのは単なる地政学リスクではない。エネルギーと通貨と資本が同時に揺らぐ、構造そのものの変化だ。
そしてその歪みの中で、利益を上げる者と削られる者が分かれていく。市場の構造上、常に少数派が勝利するとは、まさにこのことだ。そして、この構造変化はすでに金融の深部でも始まっている。
あるヘッジファンドのCEOは「プライベートクレジットはこれから核の冬に入る」と語る。
プライベートクレジットとは金融機関を通さず、投資ファンドや機関投資家が企業へ直接融資を行う非公開の貸付だ。銀行融資より審査が柔軟で迅速な一方、金利が高く、投資家にとっては高利回りが期待できる代替資産として近年急速に市場が拡大していた。
だが資産の質が劣化し、グローバルプレイヤーはファンドの解約制限に踏み込み始めている。これまで「安定した利回り」として語られてきた領域が、いまや流動性の罠に変わりつつある。
投資家、取引先、規制当局までもが、その影響を問い始める。だが本質はもっと単純だ。貸していたはずの資金が、返ってこない可能性が現実味を帯びてきたということだ。

