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「自分は何のために死ぬのか」戦中派が背負い続けた問いと、戦後81年たっても語られない広島の秘史

「自分は何のために死ぬのか」戦中派が背負い続けた問いと、戦後81年たっても語られない広島の秘史

軍歴をたどる──日米の違い

前田 佐田尾さんは、戦争で亡くなられた方の遺族に数多く取材をされていますが、皆さん歓迎してくださるというか、進んで話をしてくださるんでしょうか。戦争体験の当事者は「機会があれば話したい」と思っていたかもしれないけれど、遺族になるともうあまり関心がなかったり、あえて話したくないと思っていたりする方もいらっしゃるのかなと思ったのですが。

佐田尾 今回の本の取材では、そういうことはなかったですね。所在が分からなくて話を聞けなかった人はいますが、取材をお願いした方に断られることはなかったです。

前田 それは、佐田尾さんのお父様も陸戦隊にいらしたということで、いわば関係者だということが、受け入れてもらいやすい理由の一つになったんでしょうか。

佐田尾 そうかもしれないですが、それも人それぞれなので、本当のところは分かりません。ただ、たくさんの遺族の方たちとお会いする中で、この人たちは多分、父親の従軍体験をたどりながら、自分の生きる拠り所を見つけているんじゃないかと思うことがよくありました。その熱意を、無理矢理「反戦」「反核」といったわかりやすい言葉に結びつけないように、というのは、書きながら意識していたところですね。

そういえば、今回の本を出した後に、読者の方から「うちの父も陸戦隊員だったようです」「暁部隊にいたみたいなんです」といった連絡をいくつもいただきました。

前田 そういうときはどうされるんですか。

佐田尾 細かいところはよく分からないというケースがほとんどなので、まずは厚生労働省か都道府県に連絡して、ご本人の軍歴証明書を取ってください、とお話ししています。軍歴が手に入って、もしその読み解き方が分からなかったら代わりに読んでみますよ、ともお伝えして。

前田 私が『おかしゅうて、やがてかなしき』で映画監督の岡本喜八について調べていたときも、ご家族に軍歴証明書を取ってほしいとお願いしました。それで初めて「いつどの部隊に入ったのか」「いつどこに移動したのか」という、戦時中の岡本監督の細かい動きが日にち単位で、しかも公的な資料から分かったんです。ご家族でも、だいたいの動きは分かっていても、細かいところはご存じないことが多いんですよね。

私の祖父の軍歴も今回取得しまして、それで祖父がいつどこで何をしていたのかとか、いろんなことが分かりました。やっぱり、意外と知らないことがあるんだなと思いましたね。

佐田尾 旧日本軍の軍歴は三親等以内の親族からの請求でないと公開しないことになっているので、それが壁になるんですよね。アメリカだと、軍歴はネットで調べたらある程度わかるそうです。

著名人が自分の家族の歴史をたどる、NHKの『ファミリーヒストリー』という番組がありますが、そこに以前、俳優の草刈正雄さんが出演していました。彼のお父さんはアメリカ軍人で、ずっと「朝鮮戦争で戦死した」と聞かされていたんだけど、番組で調べたら実は死んでいなかった。他の女性と結婚して家庭を持っていたことがわかり……。『ファミリーヒストリー』で一番面白い回だと思いましたが、あれもそうやって軍歴を調べたんでしょうね。

前田 たしかにアメリカ軍のオープンさはすごいですよね。アメリカの軍人に取材するときには、退役軍人の団体に連絡して「こういう状況でこういう場所にいた人を探している」と問い合わせすると、ちゃんと探し出して教えてくれるんです。それも、お願いすると、ただ教えてくれるだけじゃなくて、生きてるか死んでるか、さらには話が聞けるか聞けないかまで確認して世話してくれる。最初は「こんなことまでしてくれるのか」と驚きました。

日本も戦争に勝っていたらそうなっていたのかもしれませんが、「日本軍」という組織がもうないですからね。旧海軍と海上自衛隊の親睦組織として「水交会」や旧陸軍の「偕行社」がありますけど、先ほどの個人情報の関係もあり、なかなかアメリカと同じようにはいかないです。

会場からの質問

──おふたりとも旧日本軍の過去の戦争に関する著作を複数出版されていますが、今の時代に戦争体験について取材し続ける動機やエネルギーはどこにあるのでしょうか。

前田 やっぱり「知りたい」という思いがあるというのは大きいです。

戦争体験については、残された資料がたくさんありますのでそれを読むだけでもさまざまなことが分かります。でも、まだ体験者の方がご存命でいる、さらにその人のことを直接知っている人がいる以上は、お目にかかり、そのお話を自分の耳で聞いてみたい。戦争の話をしているのに好奇心という言葉はふさわしくないかもしれませんが、そういう思いがあります。

その上で、戦争とは何だったのか、昭和とはどんな時代だったのかということを、自分の手で描き出してみたい。そう思って執筆活動を続けています。

佐田尾 私は、たとえばですが終戦の日に玉音放送を聞く前、そして聞いた後に、当時の人たちがみんな何を考えたかということにとても興味があるんです。同じ玉音放送でもみんな、人によってそれぞれに受け止めが違うはずなんですよね。

文学者であれば島尾敏雄などがそういう作品を書いています。私は、実際の証言や文献から、ある一つの時点に何が起こっていたのかを、群像劇的に描き出したい。そういう意欲が一番大きいと思います。

──戦争の歴史を語り継ぐということに対して、どんな思いで取り組まれていますか。

佐田尾 前田さんも先ほど「知りたい」という言葉を使われましたけれど、私も「真相を知りたい」という思いが強いです。たとえば、なぜ日本の終戦工作はうまくいかず、あれほどまでに終戦が遅れたのか、実はもっと遅れていたかもしれなかったとか、さまざまな歴史の「真相」を記者として知りたいという思いがある。そのために、さまざまな証言を集めたり文献を読んだりしているところですね。

前田 先の大戦では日本において、軍人・民間人あわせて310万人以上が亡くなったといわれています。これは、すごく深刻なことですよね。しかも、まだわずか80年前のことですから、「歴史」にもなりきっていないといえると思います。私たちは、直接体験者から話を聞いたりして、事実を知り得る立場にあるわけです。だったら知りたい、調べたいと思うんですね。

しかも、日本は昔からずっと戦争だけをしていたわけではありません。日中戦争に入っていく直前、満州事変をきっかけに景気もよくなったし、文化的にも非常に豊かな時代でした。そういう時代があったのになぜそこから戦争になって、310万もの人が亡くならなくてはならなかったのか。昭和時代の日本とは何だったのか。そういうことを、軍事、政治、経済、映画、小説、詩、音楽などさまざまな角度から調べてみたいという思いで頑張っています。

構成/仲藤里美 撮影/徳山喜行

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