カンブリア爆発は見えるようになった時期に過ぎないのだろうか?

今回の発見は、「カンブリア爆発」というよく知られた進化の物語を見直すきっかけになりました。
これまでのイメージでは、複雑な動物たちはカンブリア紀にまるで舞台に飛び出すように突如現れ、急に多様化したと考えられてきましたが、どうやら実際の進化はもっと前から進んでいたようなのです。
つまり、カンブリア爆発は「ゼロからのスタート」ではなく、エディアカラ後期から続く多様化の「見える化」つまり化石に残りやすくなった時代である可能性が浮上してきました。
これは、科学の世界でしばしば起きる、非常に興味深い逆転現象と言えるでしょう。
つまり、化石記録の穴は、生き物が存在しなかった「進化の空白期間」を意味するのではなく、少なくとも一部は「保存条件の差が作った記録の偏り」を意味する可能性が高いということです。
そう考えると、世界中でこれまで複雑な動物が乏しいように見えてきた場所や時代にも、実は私たちの知らない多様な動物たちが存在していた可能性があるということになります。
この考え方は、今後の研究の方向を大きく変えるかもしれません。
この発見は、これまでとは違った場所や方法で化石を探す動きを後押しするでしょう。
もちろん、今回の化石群に含まれる生き物の正確な位置づけや詳しい分類については、まだまだ議論の余地があります。
例えば、今回見つかった生き物の中には、非常に奇妙な姿をしていて、現代の動物の分類表にうまく当てはまらないものも含まれているのです。
それはまるで、初めて見た不思議な乗り物が、車なのかバイクなのか、それとも全く新しい乗り物なのか、すぐには決められないのと同じような状況です。
こうした疑問は今後、新たな化石の発見や、もっと詳しい研究が進む中で徐々に解決されていくことでしょう。
江川生物群という新しい資料が増えたことで、動物の進化の歴史を考える材料がぐんと増えたことは間違いありません。
今回の研究をきっかけに、世界中の研究者たちが、これまで想像もしなかった新しい問いを立て、新しい答えを探していくことになるでしょう。
元論文
The dawn of the Phanerozoic: A transitional fauna from the late Ediacaran of Southwest China
https://doi.org/10.1126/science.adu2291
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

