脳は関連する言葉にだまされやすい
次に紹介するのは、これまでと関連があるものの、もう少し難しい練習です。図Fの上端の欄に、ランダムに選んだ15個の言葉があります。これを「記憶リスト」と呼びましょう。
まずは、よく見てください。それから、ゆっくり読んでレコーダーに録音します。録音を終えたらリストを隠し、思い出せる順でかまいませんから「1回目」の欄に書きこんでください。何個書けましたか?
では、上端の欄のリストは見ずに、録音した自分の声を聞いてください。そして、「2回目」の欄に思い出せる言葉をすべて書きこみます。これをさらに3回繰り返し、「5回目」の欄まで記入しましょう。繰り返すたびに思い出せる言葉が増えるはずです。5回目で全部思い出せましたか?
次に、2つ目のリスト(「干渉リスト」と呼びます)をつくり、読みあげて録音します。図Fにサンプルがありますので使ってください。
それを聞いてから、思い出せるだけ「6回目」の欄に記入します。さて、それでは元の記憶リストの言葉を、録音を聞かずに思い出して「7回目」の欄に記入しましょう。何個書けましたか? この練習に慣れるまでは、干渉リストの言葉が「侵入」してきて、記憶リストの覚えが悪くなるはずです。
ここで、タイマーを5分にセットしてリラックスしてください。アラームが鳴ったら、先に5回聞いた記憶リストの言葉を全部書いてみましょう。これを遅延再生といいます。
最後に、認識記憶のテストをしましょう。誰かに、記憶リストの言葉15個と、そこには載っていない不正解の言葉15個とを交ぜてリストをつくってもらいます。そのリストを見て、正しいと思う言葉だけを丸で囲んでください。
脳には困った癖があるので気をつけましょう。脳は関連する言葉にだまされやすく、誤って認識することが多いのです。たとえば、記憶リストに「ペン」「指」「腕時計」があったので、うっかりだまされて「鉛筆」「親指」「置き時計」を選んでしまうかもしれません。
読んだことのある本の要約を思い出す
これができたら、よりいっそう難しい練習に進みましょう。誰かに頼んで、記憶リストと干渉リストのための言葉を選んで、レコーダーに録音してもらいます。
自分で行うと、無意識のうちに好きな言葉やよく使う言葉を選んでしまい、記憶力がよくなったと誤解することがあるからです。さらに、自分の声より他の人の声で練習するほうが難しくなります。頭の中で何度も繰り返す自分の声を聞くことができないからです。
もっと一般的な練習として、要約本を使って行うものを紹介しましょう。以前に読んだことのある作品を選んでください。1章の要約を読んだら、思い出せることをすべてレコーダーに録音します。目標は、細かい点まで正しく思い出すことです。たとえば、以下はわたしのお気に入りの小説の一つ、『罪と罰』の第3部第4章の要約です。
ラスコーリニコフ一家が再会して話しているところへ、ソーニャがやってきた。ロージャ(ラスコーリニコフ)は彼女に席をすすめて母と妹の間にすわらせた。ソーニャが来たのは、父の葬儀とその後の食事に彼を招待するためである。
というより、継母カテリーナ・イワーノヴナから頼まれて、ぜひ来てもらうよう懇願するためだった。ソーニャは急に恥ずかしくなった。ラスコーリニコフの貧しい部屋のようすから、彼が全財産をソーニャたちに与えたことに気づいたからだ。
思い出したものの中には、詳細がすべて入っていなければなりません(家族の再会、名前、ソーニャがすわった席、ソーニャが来た目的、彼女の観察と結論など)。
次に、書かれたものではなく、語られたことに対する短期記憶を試してみましょう。まず、誰かに何章分かの要約をゆっくり読んで録音してもらいます。こうすれば、正しく思い出せるようになるまで何度も聞くことができます。

