日本がバブル崩壊後の「失われた30年」を過ごしていた間に、中国は急成長を遂げた。そんな中、2025年に発足した高市早苗政権は「サナエノミクス2.0」を発動。国が巨額の投資を行い、国家主導で成長を促すという手段を取りはじめた。果たしてこの政策は成功するのか。登録者数100万人を超える人気のYouTubeチャンネル「大人の学び直しTV」を運営するすあし社長に解説してもらう。
※本稿は、すあし社長『この国の「なぜ?」が見えてくる日本経済地図』(かんき出版)の一部を再編集したものです。また、本書は2025年12月時点の日本経済、世界情勢に基づいた内容です。
人類史上稀に見る速度で成長を遂げた中国
90年代初頭にバブルが崩壊してから30年強。日本が停滞にあえぐ傍ら、中国は人類史上稀に見る速度で成長を遂げました。
78年の改革開放以来、中国は「社会主義市場経済」という独自のシステムを構築しました。市場メカニズムを取り入れつつも「共産党による強力な統制」と「国有企業への戦略的な資源配分を行う」、このモデルこそ「国家資本主義」のある種の完成形でした。
01年のWTO加盟を機に「世界の工場」になった中国は、08年のリーマンショックにおいてその優位性を証明しました。世界経済が麻痺するなか、4兆元(当時約53兆円)の財政出動を瞬時に決断・実行し、いち早く回復軌道に乗せたのです。その結果、10年にはGDPで日本を抜き去りました。
習近平体制下(12年―)では、「中国製造2025」(Made in China 2025。習近平政権が掲げる「製造強国」への転換を目指す国家戦略)に見られるように、半導体やAI、電気自動車(EV)といった戦略分野へ国家資源を集中投下し、技術覇権を奪取しにかかりました。
24年、中国のGDPは日本の4倍を超え、世界シェアは18%に達しています。
これほどの差がついた原因は国家の「ルールの違い」
なぜこれほどの差がついたのか。その本質は、「自由競争」と「国家ぐるみの総力戦」というルールの違いにあります。
通常の資本主義では、企業は自らのリスクで資金を調達し、失敗すれば市場から淘汰されます。しかし、中国の国家資本主義では、国が戦略的に定めた産業に対し、政府系金融機関を通じて無尽蔵ともいえる資金が注入されます。
「利益が出るか」ではなく「国家の覇権に必要か」という基準で、採算度外視の巨大投資が実行されるため、個別の民間企業で戦う西側諸国は、その規模とスピードにおいて太刀打ちができなかったのです。
特にリーマンショック時の対応は、民主主義の弱点と独裁体制の強みを世界に見せつける決定打となりました。議会での合意形成に時間を要し、対策が後手に回る民主主義国家を尻目に、中国共産党はトップダウンの即断即決で巨額マネーを動かし、危機すらも成長の燃料へと変えてみせました。
日本が構造改革の痛みを恐れ、決断を先送りにした30年間。中国はこの「意思決定の圧倒的な速さ」と「リスクを恐れぬ資源の集中」を武器に、国家そのものを巨大な企業体のように運営することで、経済戦争を勝ち抜いてきたのです。
「市場の手に委ねるだけでは、国家主導の中国には勝てない」──この冷厳な事実は、日本の政策転換における決定的なトリガーとなりました。かつて自由市場経済を主導していたアメリカもまた、変貌を遂げました。

