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寝たきりだった女性、一度の点滴で「元気になった」と判明――3つの難病が同時に寛解

寝たきりだった女性、一度の点滴で「元気になった」と判明――3つの難病が同時に寛解

たった1回「数十分の点滴」で3つの難病が寛解

ベッドから彼女が起き上がるまで
ベッドから彼女が起き上がるまで / Credit:Korte et al.

治療の流れは、医療ドラマにしては驚くほど短いものでした。

投与当日、彼女の体重1キロあたり100万個、合計およそ数千万個の改造T細胞が点滴で体に入っていきました。

これは薬の瓶を一本、腕から落とすだけの、わずか数十分の出来事です。

点滴はこれ一回きり。

毎日通う必要も、繰り返しの投与もありません。

しかし体の中では目に見えない効果が起き始めていました。

注入された改造T細胞は、血流に乗って全身を回り、潜んでいたB細胞を一つひとつ見つけ出しては処分していきます。

そして自分自身も分裂して増えていきます。

やがて彼女の血液中からは、誤作動していたB細胞がきれいさっぱり姿を消しました。

投与から7日目、彼女はそれまで頼ってきた輸血を最後に1回受けたきり、もう二度と必要としなくなりました。

退院した直後から、彼女は見違えるように元気を取り戻し、自分の足で立ち、普段どおりの生活を送れるようになったのです。

25日目、彼女のヘモグロビン値は13.0グラムで女性の正常範囲のど真ん中の数字です。

赤血球が壊されているときに上がる指標(LDHやビリルビン)もその後正常域に戻り、血液検査の紙の上では、少なくとも主要な指標はすべて寛解域に入っていました。

免疫系を「リセット」するという発想

Credit:Canva

ここまで読んで、あなたはこう思うかもしれません。

「B細胞を全部片付けてしまって、風邪もひき放題になるんじゃないの?」

この治療が素晴らしいのは、まさにそこです。

人間の免疫系には、過去にかかった病気やワクチンの記憶を、B細胞とは別の場所にしまっておくしくみがあります。

幼い頃に受けた麻疹のワクチンの記憶、インフルエンザを乗り越えたときの抗体、それらは「形質細胞」という別の細胞に保存されていて、骨髄の奥で静かに眠っている。

この細胞はB細胞の目印(CD19)をほとんど持たないため、CAR-Tの攻撃対象から外れるのです。

つまり、暴走していた古い世代のB細胞は一掃される一方で、過去の感染やワクチンの思い出はそのまま残る。

そして数か月経つと、骨髄から新しいB細胞が生まれてきます。

この新品のB細胞たちは、まだ誰の顔も覚えていない、真っ白な状態の新入社員です。

実際、この女性の場合、治療から322日目に再登場したB細胞の98%が、この「まだ何も知らない新入社員」状態でした。

これを医師たちは「B細胞の深いリセット」と呼んでいます。

彼女の三つの病気はどれも、違うB細胞が違う指名手配書を刷っていたせいで起きていましたがB細胞がほぼ刷新されたせいで、それが収まったわけです。

気になる副作用も、CAR-Tでよく問題になる急性の重いものは目立ちませんでした。

CAR-T療法ががん治療で使われるとき、しばしば問題になる副作用があります。

大量のがん細胞が一気に死ぬと、体が激しい炎症反応を起こし、高熱や血圧の低下、臓器障害を起こすことがあるのです。

「サイトカイン放出症候群」と呼ばれるこの副作用は、時に命に関わります。

ところが、自己免疫疾患の治療で使う場合、相手にする細胞の数がずっと少ない(がんのように膨大な数の異常細胞を相手にするわけではない)ため、この副作用がほとんど出ないのではないかと研究者は考えています。

実際、この女性にも、よく話題になるサイトカイン放出症候群も、脳の副作用も、まったく起きませんでした。

ただし治療後には、肝機能の数値上昇と、白血球の減少もみられています。

著者らは、長年の輸血による鉄過剰や、それまで受けてきた治療の影響が有力な原因だと考えています。

毎日3パックの輸血を何年も続ければ、体は鉄過剰になるのは自然でしょう。

論文の著者たちも「鉄過剰や過去の治療の副作用を避けるには、もっと早い段階でB細胞を根本から叩く治療に踏み切るべきだろう」と書き添えています。

配信元: ナゾロジー

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