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400年前の「マスケット銃弾」が最先端ソーラーパネルになった――究極のリサイクル技法

400年前の「マスケット銃弾」が最先端ソーラーパネルになった――究極のリサイクル技法

この研究が本当に意味していること

400年前の「マスケット銃弾」が最先端ソーラーパネルになった――究極のリサイクル技法
400年前の「マスケット銃弾」が最先端ソーラーパネルになった――究極のリサイクル技法 / Credit:Canva

弾丸の話はインパクトが強いので、ついそこばかりに目が行きますが、研究チーム自身は「弾丸が主要な鉛廃棄物だと主張するつもりはない」とはっきり書いています。

弾薬はアメリカの鉛消費量のせいぜい3%ほど。

本当の意味は別のところにあります。

「これほど汚い素材でも処理できるなら、世の中にもっとたくさんある鉛ゴミも処理できる可能性が大きく高まった」という重要な一歩になったこと。

これが一番大事なポイントです。

実際、論文の補足資料では、古い車のバッテリーや屋根材の鉛でも同じ方法が機能することが示されています。

近い将来、ペロブスカイト太陽電池そのものが寿命を迎えて廃棄される時代が来たときにも、この技術が応用できる可能性があります。

毒性のある廃棄物を閉じ込めながら、同時にクリーンエネルギーの原料に変える。

捨てるものを使うものに変える。

言葉にすると当たり前に聞こえますが、それを実際の科学で形にしたところに、この研究の本当の価値があります。

戦場の鉛が、太陽を受ける側へ

400年前の「マスケット銃弾」が最先端ソーラーパネルになった――究極のリサイクル技法
400年前の「マスケット銃弾」が最先端ソーラーパネルになった――究極のリサイクル技法 / Credit: Sytnyk et al., Cell Reports Physical Science (2026)

最後に、少しロマンチックな話を。

今回使われた弾丸が作られたのは、日本でいえば戦国時代の終わりから江戸時代の初め。

ヨーロッパでは三十年戦争や宗教戦争のまっただ中です。

かつて誰かを撃つために鋳造された鉛の玉が、土の中で、あるいは誰かのコレクション棚で、ひっそりと400年を過ごしてきました。

それがドイツの研究室に届き、溶かされ、電気を流され、黄色い粉になり、最終的に太陽の光を電気に変える装置に組み込まれる。

かつて命を奪うために作られたものが、今度は命を支えるエネルギーを生む側に回る。

「刀を鋤に変える」という古い言葉がありますが、これはまさにその現代版なのかもしれません。

eBayで400年前の弾丸を買い、真剣な顔でそれを溶かして太陽電池にしてしまう科学者たち。

その突飛な光景の奥には、「どんな過去の負の遺産でも、未来のエネルギーに変えられる」という、静かで力強いメッセージが確かに流れています。

もしあなたの家にいつかペロブスカイト太陽電池が届く日が来たら、そのパネルの中の鉛は、誰かが捨てた古いバッテリーや、土の中で眠っていた弾丸から生まれ変わってきたものなのかもしれません。

古い弾丸が陽の光を受けて電気を生む日は、研究室の中では、もう始まっているのかもしれません。

元論文

Upcycling bullets into solar cells converts lead waste into a green energy source
https://doi.org/10.1016/j.xcrp.2026.103207

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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