アニメ化もされた人気マンガ『ハイキュー!!』や、国際大会での日本代表選手の活躍もあり、盛り上がりを見せるバレーボール。しかし少子化や過疎化により競技人口の減少という課題にも直面している。そこで日本バレーボール協会は2018年に”ある出場資格”を用いた中学生向けのバレーボール大会を提案。これまで、その提案を元に全国でユニークなバレーボール大会が開催されてきた。この大会の提案者でもある日本バレーボール協会(以下JVA)と、実際に大会を実施した岐阜県と東京都の方々にお話を伺った。
参加資格は初心者であること
photo by Shutterstock新しいスポーツにチャレンジする際のハードルの1つに「経験値」がある。部活動やサークルなどの勧誘で「初心者大歓迎」と言われても、周囲が経験者ばかりの環境に飛び込むのは勇気がいる。そんな初心者を救済するのが日本バレーボール協会が推奨する「中学生ビギナー交流大会」だ。大会は都道府県ごとに開催されていて、細かいルールはそれぞれの主催者に委ねられているが、基本的には中学校からバレーボールを始めた中学1、2年生を対象とした大会。つまり、参加資格は「バレーボールのビギナーであること」なのだ。
「以前から、どうやって競技人口を増やすか、が課題でした。バレーボールは中学生になってから始める子どもも多いのですが、当然、小学生の時からバレーボールをやっている子の方が競技歴が長い分、上手ですよね。そのため、中学で始めた子が挫折してしまうこともあるようです。そうした中学校から始めたビギナーの子にも、せっかく始めたバレーボールに継続的に接してもらいたいという思いから、こうした大会がはじまりました」
と話すのは、バルセロナオリンピック出場経験を持つ、元バレーボール男子日本代表選手で、現在は日本バレーボール協会競技普及チームディレクターを務める大竹秀之氏だ。本事業は、北海道から九州までエリアごとに9つのブロックに分けて管轄しており、大会の詳細については各ブロックごとに異なるという。
「各地で、それぞれ状況が異なりますから、開催時期や大会プログラムなどもブロックごとに任せるなど柔軟性を持って実施しています」(大竹氏)
たとえば、東海ブロックでは「今年は静岡で開催したので翌年は岐阜県で」といったように県が持ち回りで大会を行っているそうだ。
定員オーバーするほどの大盛況

しかし、いきなりビギナー中心の大会を開催して、参加者は集まるものなのだろうか。実際に大会を開催している地域のバレーボール協会の方にお話を伺った。
岐阜県では「中学生ビギナー交流大会」を2019年に初めて開催した。
「初回は募集をしてもそれほどチーム数が集まるとは思っていませんでした。ですから会場は男子1面、女子1面のコートを取れる体育館を準備したのですが、男子10チーム女子15チームほどの応募があったので、先着順で男女7チームずつで締め切ることになりました」
と、当時を振り返るのは、岐阜県バレーボール協会の指導普及委員長、岡田武司氏だ。翌年はコロナ禍の影響で開催できなかったが、2022年にはコートが4面ある体育館で再開し、現在まで毎年行われているそうだ。
東海ブロック/岐阜県「会場を広くして募集人数も増やしましたが、毎回、募集開始から1週間ほどで定員に達してしまうほど人気となっています」(岡田氏)
大会にはチーム単位での参加はもちろん、個人でも参加が可能。個人参加の場合は、個人参加の生徒たちでチーム編成をするという。さらに大会運営のサポートとして県内の高校のバレー部に所属する生徒たちも参加する。
「高校生たちは、個人で参加した子が孤立しないようサポートしてくれたり、技術的なアドバイスをしたり、試合で声かけをしてくれたりと、大会を盛り上げてくれます。参加資格は中学入学後にバレーボールを始めた1、2年生ですが、参加した1年生の中には、来年も参加したいので開催してほしいと言ってくれる子もいました。楽しんでくれたようです」(岡田氏)
大会の目的は技術の向上や勝ち負けを決めることではなく、バレーボールの楽しさを知って継続してもらうことなので、ボールに触れ、楽しむ機会を増やす工夫をしているとのこと。
「以前は最初にバレーボール教室をやっていましたが、昨年度からはやめて、最初にリーグ戦をやり、最後に順位を決めるトーナメント戦を行うようにしました。また、ボールをつなぐ楽しさを知ってもらえるよう、ルールもダブルコンタクトやキャッチなどの反則はできるだけ取らないようにしています」(岡田氏)
子どもたちは、普段はプレーすることがないような大きな会場での開催ということもあり、いい意味での緊張感をもちながら、通常の公式戦とは違う雰囲気でバレーボールを楽しんでいるそうだ。
関東ブロック/東京都東京都は現在、毎年1月の第4日曜日に「ビギナーズカップ」と称して、「中学生ビギナー交流大会」を行っている。東京都の場合、参加チームが多いため、大会は1か所ではなく、複数の会場で行われるのだそうだ。そして、応募は同一校に在籍する生徒によって編成されたチーム単位となる。
「東京都の中体連の組織は11のブロックに分かれています。ですから、まず9月に各ブロックに募集をかけて、参加チームが決まったところで各学校からの交通の便などを考慮しながら、会場選びをし、組み合わせを考えます」(堀江氏)
と、話すのは東京都中体連(中学校体育連盟)バレーボール競技部の指導普及委員長、堀江朋一氏だ。たとえば直近の2026年1月25日に行われた令和7年度の「ビギナーズカップ」は、男子の部52チームが9会場、女子の部163チームが28会場に分かれて試合を行った。
「開催日は日曜日ですし、学校によっては会場まで距離があったり、交通費がかかったりしますから、学校や保護者の理解、協力が必要です。各学校の子どもたちも指導者もそうした問題をクリアして『よし、参加しよう!』という気持ちでやってくるので、共にバレーボールの楽しみを分かち合いたいという気持ちがあると思います」(堀江氏)
