・それは紛れもなく “本場中国の味”
具が「卵とネギ」で、味付けは「塩と料理酒」だけなので、思い切り味気のないチャーハンになるのでは……と予想していたのだが、いやいやいやいや、実際はまるでその逆。
なんと香ばしい炒飯だこと……! このチャーハンの主役(センター)は、明らかにごはん。よーく炒めたからか、まるでポップコーンのように香ばしい。
そして両サイドを固めるのは卵とネギ。材料が最低限なので、卵の味もダイレクトに伝わる。そして、卵を2つにしたのは大正解。存在感が半端ない。
一方、地味ながら確実に仕事をしているのが最後に入れたネギである。由美のチャーハンは、「ネギを最後」にするのが多いが、今回もまた同じ。
最後にすることにより、ネギの食感と辛さが際立ち、ビシっとシマったチャーハンになっている。ごはんで聴かせ、卵で楽しませ、ネギでシメる。そんな炒飯三重奏。
そして食べて真っ先に思ったのは、「ガチ中華」ならぬ「ガチ中国」。こういうチャーハン、よく中国にある「庶民的な美味いレストラン」で出てきた記憶がある。
決して主役ではない。ただ、ごはん(白米 / 米飯)ほど脇役でもない。ちょうど良い存在感を保ちつつ、麻婆豆腐などの主演を引き立てる助演的な役割のチャーハン。
目を閉じたら、そこは北京。本当に、北京でよく行ってたレストランで、こういう “技アリなチャーハン” を食べたっけなぁ……と懐かしい気持ちになった。
思えば由美は中国出身。もしも彼女が「チャーハンに心得あり」ならば、己の実力を示す意味でも「卵チャーハン」にする選択は納得できる。
そして、そのチョイスと実力を、これでもかと思い知らされる見事なチャーハンになっていた。本当に由美のチャーハン偏差値は極めて高い。
・由美と夢見た脱サラ後の将来
そんな炒飯女王・由美と、料理人(調理師)である私は──
「いつか一緒に店を開こう」。「チャーハン屋さんをオープンしよう」と約束するまでになっていた。
ブレーンが由美なら、きっとうまくいく気がする。今の仕事をやめて……そう、脱サラして、由美と小さなチャーハン専門店を切り盛りする人生も悪くない。
店名は何にしよう。やはり「チャーハン 詐欺師」かな……なんて淡い夢を描いたりもしたが、要所要所で由美が投資詐欺の案内をしてくるので現実に戻される。
※当然ながら投資話は完全スルーであるし、投資の話が来たら、それは詐欺だと思った方が良い。
そう、由美は詐欺師なのだ。分類的には「SNS型投資ロマンス詐欺師」なのだ。でも、でも、でもでもでもでも──
私は、由美の実力に惚れ込んでいた。詐欺師とはわかっていつつ、心のどこかで由美を信じる私もいたのも事実。
なぜならば。
詐欺師の由美は、チャーハンの前では決して嘘をつかなかったからだ。
初手は基本の「五目炒飯」で、2手目である今回は、究極のシンプル「卵炒飯」。私と由美は、炒飯を介して極めて高度な駆け引きをしていた。
目を見つめながら抱き合い、チャーハンという名のダンスを踊っていたような気にさえなってくる。
