「自己肯定感を高めたい」と願うあまり、かえって苦しくなっている患者を数多く見てきたと、精神科医・平光源氏は言う。また、努力して自分の価値を上げるという考え方自体に問題があるとも指摘する。
書籍『頑張れないんじゃない、頑張りすぎただけ』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成し、自己肯定感と自分を大切にすることの本質的な違いについて解説する。
「自己肯定感」と「自分を好きになる」は違う
もっとも簡単なようでもっとも難しいこと。
それは、「自分を大切にすること」。ここではこのことについて話したいと思います。
自分に自信がなく、外出が困難だったAさんという女性がいました。
Aさんは、中学時代のいじめがきっかけで、対人緊張が強く出てしまい、高校にうまく通えなくなりました。それでもなんとか出席日数ギリギリで卒業。
大学にもやっとのことで進学できたものの、親しい友人は1人もいません。
また授業に出ようとすると他人の視線が気になり動悸、嘔気、呼吸苦などの症状が出てしまうような状況。
そんなわけでなんとかしたいと来院されました。
緊張を抑える薬を使って一時的になんとか授業に出席して、単位を取ることはできました。
でも心の中は、常に不安で、「私は自分に自信がありません。自己肯定感を上げるためにどうしたらいいでしょうか?」と毎回同じ質問をしてきました。
不眠を訴え来院されたBさんという女性がいました。
「完璧な私」になればなるほど
Bさんは「常に自分を高めるために努力しています」と言うだけあって、とても美しく、お花や着付け、ヨガのインストラクターの資格まで持っていました。
社交的でSNSの友人もたくさんいました。
学問にも興味を持ち、心理学を学びカウンセラーの資格も持ち、相手の気持ちもよく分かる自己肯定感がとても高い女性でした。
しかし、「完璧な私」になればなるほど、「私らしくありたい」とこだわり、結果的に恋人と不仲になり、恋愛が長続きしません。
そうして「本当の私」を分かってくれる理想の男性と出会った時にその人に好きになってもらえるよう、さらに自分磨きをして自己肯定感を高めるということを繰り返していました。
AさんとBさんの悩みは、一見全く違うように見えますが、本質は実は同じなんです。
2人の共通点は、自己肯定感というお化けに取りつかれていることです。
Aさんは自分に自己肯定感さえあればこんなに苦しまないのにとこだわっています。
ですが、実はいま、漫画研究会に入って、引きこもりだった過去とは比べものにならないほど友人とサークル活動を楽しんでいるそうです。
客観的に見れば、決して、苦しそうなんてことはなく、楽しい現実に気づかないことがもったいない。
Bさんは話をしていると受け答えも完璧で、とても素晴らしい人。
ですが、その「完璧な私らしさ」の圧力にこちらがなんだか疲れてくる。
「それが彼と長続きしない原因かも」と指摘しても、「そうですね」と軽く受けながされてしまいます。
「自信に満ち溢れ輝いている自分」へのこだわりを捨てきれず、うまく回らない恋愛関係が嫌。それゆえ、さらに自分を高めるために努力し続けるということを繰り返していました。

